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労災の申請・補償状況とFAQ

毎年6月末、厚生労働省から昨年度の労働災害(以下、「労災」といいます)の状況のとりまとめが公表されます。
昨年の2021年度は、過労死等に関する請求件数が3,000件超と、過去最多になりました。
業務中に事故が起きたとき、正しい知識がなければ必要以上に慌ててしまったり、労災申請を速やかに行えなかったりという事態につながってしまいます。
今回は、労災の詳しい定義や社労士に寄せられる労災申請に関するよくある質問を紹介しますので、もしものときの備えにしてください。

①2021年度の労災申請・補償の状況は?

22022年6月24日に厚生労働省から公表された「過労死等(※)の労災補償状況」によると、2021年度の過労死等に関する請求件数は3,000件超(3,099件、前年度比264件の増加)と、過去最多になりました。
(※「過労死等」とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、またはこれらの脳血管疾患・心臓疾患・精神障害をいいます。)

内訳としては、脳・心臓疾患にかかる請求件数は753件(前年度比31件の減少)であるのに対し、精神障害にかかる請求件数は2,346件(前年度比295件の増加)と、圧倒的に多くなっています。

<労災による精神障害の順位>
精神障害についてみてみると、給付の支給が決定された629件のうち第1位から第3位までの事案は、以下の通りです。
1. 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた・・・125件
2. 仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった・・・71件
3. 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした・・・66件

<パワハラ防止措置は企業の義務>
第1位は、いわゆる「パワハラ」です。パワハラの防止措置が義務化された(大企業では2020年6月1日、中小企業では2022年4月1日から)ことに合わせて、精神障害の労災認定基準にも明記されています。
具体例としては、人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない・業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃により精神障害を発症した場合などが、労災認定されるケースとして記載されています。
*パワハラの防止措置ついては、こちらの記事もご覧ください*

参考:厚生労働省「令和3年度『過労死等の労災補償状況』を公表します

②そもそも「労働災害」とは何のこと?

そもそも「労働災害」とは、業務中や通勤中に起きた事故により従業員が病気やケガを負ってしまうことを指します。原則として労災への補償は会社に義務がありますが、確実に病気やケガへの補償を行うため、保険料をプールして給付として支払う労災保険という制度が整備されています。
労災保険は、従業員を1人でも雇ったら必ず加入しなければなりません。雇用保険・健康保険・厚生年金保険とは異なり、従業員の雇用形態や所定労働時間数にかかわらず、働く時間の短いパートやアルバイトであっても、従業員を雇用していれば労災保険に入る義務があります。
病気やケガが労災に該当するかどうかは、会社や従業員、社労士が決めるのではなく、労働基準監督署が決めます。そのため、労災が起きたと思われるときは、自社で労災に該当するか判断するのではなく、申請をして労働基準監督署に労災かどうかの判断を仰ぎます。

<給付内容の内訳>
従業員が負った病気やケガが労災と判断された場合、主な給付の内容は以下のとおりです。
療養(補償)給付:医療機関で療養を受けたとき
休業(補償)給付:療養のため休業し、お給料が支払われないとき
傷病(補償)年金:療養開始後1年6ヶ月経っても治癒せず傷病等級に該当するとき
障害(補償)給付:病気やケガが治癒して障害等級に該当する身体障害が残ったとき
遺族(補償)給付:従業員が亡くなってしまったとき
葬祭料・葬祭給付:従業員が亡くなり、遺族等が埋葬や葬祭を行ったとき
介護(補償)給付:一定の障害により傷病(補償)年金か障害(補償)年金を受給し、介護を受けているとき
(※「補償」とついているものは業務災害、ついていないものは通勤災害への給付です)

給付額や給付期間は、給付内容によって異なります。たとえば、休業(補償)給付は、休業している期間において休業1日当たり「給付基礎日額(原則として労働基準法の平均賃金に相当する額)の80%」が支給されます。
労災への給付は、毎年会社が納めている労災保険料からまかなわれます。労災保険の制度は、加入者全員の保険料をプールして確実に補償がなされます。そのため、仮に労災保険に加入して1ヶ月しか経っておらず、従業員が休業(補償)給付を受けたとしても、自社で全ての給付額を従業員に支払う必要はありません。
ただし、労災の給付はあくまで病気やケガの補償のために支払われるのであって、慰謝料としての金額は含まれません。労災に関して会社に損害賠償責任が認められる場合などは、慰謝料や見舞金などが別途請求される可能性はあります。

<労災かくしは何故NG?>
いわゆる「労災かくし」には罰則が設けられているので十分に注意しましょう。「労災かくし」とは、労働基準監督署に労災申請をしなかったり労働者私傷病報告をしない・虚偽の報告をしたり、従業員に健康保険を使って療養させたりすることを指します。保険料の増加や企業評価の低下を恐れるがゆえに労災かくしをするのかもしれません。しかしながら、必ずしも保険料が上がるとは限りませんし、何より後で労災かくしが発覚した方が企業評価を著しく低下させることにつながるでしょう。
労災が起きてしまったことに適切に対応することも重要ですが、いかに再発防止策を講じ、その状態を維持し続けるかも重要なのです。

③社労士に寄せられる労災申請に関するよくある質問

以上、労災のなかでも特に過労死等の申請・補償状況と労災の定義について解説しました。
最後に、労災申請に関して社労士に寄せられるよくある質問を紹介します。

Q1:業務中に事故が起きました。これは労災にあたりますか?
A:労災にあたる可能性が高いかどうかはお答えできますが、実際には労働基準監督署が決定します。

Q2:従業員が上司からのパワハラで精神疾患になったのは労災だと言ってきました。どうすればよいですか?
A:労災と認定される可能性もありますので、従業員が申請したいと言った場合、労災申請をしましょう。

Q3:従業員が通勤中にケガをしたようです。労災申請したいとのことですが、その日は寄り道をしていたとのこと。労災に該当しますか?
A:通常の通勤経路から逸脱していた場合は労災と認定されない可能性が高いです。ただし、従業員が申請したいとのことであれば労災申請をしましょう。労働基準監督署が詳細をヒアリングし、労災か否かを決定します。

Q4:従業員は労災との主張ですが、当社としては絶対に労災だとは思えません。それでも会社経由で労災申請すべきでしょうか?
A:基本的には、従業員の労災申請をサポートする姿勢を取るべきです。書類に「当社は疾病・ケガの原因を特定できませんので、貴庁にてご判断をお願いします」などと記載して申請するのも一つの方法ではあります。

Q5:会社が労災申請をサポートしてくれません。自分で申請することは可能ですか?
A:給付の申請手続きは、従業員ご自身で行うことも可能です。申請書類は、労働基準監督署で手に入れるか、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。分からないことは、労働局・労働基準監督署・労災保険相談ダイヤルのいずれかにご相談ください。

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