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傷病手当金の支給期間のカウント方法が変わります

年が明け気持ちを新たにした方もいらっしゃるでしょうが、今シーズンは全国的に雪が多く寒い時期が続きますね。コロナ禍もなかなか収まらず、メンタル面のトラブルも起きているかもしれません。
休暇中などに傷病によって働けない方が生じたときには、休職制度の適用を検討することになります。
休職制度を正しく取り扱うには、健康保険の「傷病手当金」の理解が必須です。
2022年1月1日から、傷病手当金の支給期間に関するルールが変わりました。正しく理解して、ぜひ労務管理に活かしてください。

①傷病手当金とは

そもそも傷病手当金とは、業務外の私生活において病気になったりケガをしたりして働けなくなってしまったときに支給される手当金のことです。
似たような制度に「労災保険」がありますが、傷病手当金とは異なりますのでご注意ください。労災保険は、業務上か通勤途上での病気やケガに対して適用される保険制度です。
一般的に、傷病手当金の支給対象は「私傷病」と表現します。「私傷病」とは、業務上や通勤途上ではなく、業務外の私生活において発症した病気やケガという意味です。
傷病手当金の支給要件は、主に以下の3つです。

傷病手当金の3つの支給要件

1私傷病の療養のために働くことができない
2休みを開始してから連続4日以上働くことができない
3休んだ期間についてお給料が支払われない

「私傷病の療養のために働くことができない」は、主治医が証明することによって要件を満たすことができます。病院に傷病手当金の申請書を持参して、病気やケガの名前、初診日、働けない期間などを記入してもらいましょう。
「休みを開始してから連続4日以上働くことができない」ことは、傷病手当金の趣旨に照らして設けられた要件です。傷病手当金は、私傷病によって一定期間働けない状態を救済するために整備された制度で、その「一定期間」が「連続4日以上」と決められています。
「休んだ期間についてお給料が支払われない」は、会社が証明することによって要件を満たすことができます。傷病手当金の申請書にお給料の支給状況を記載する欄がありますので、会社の担当者に記入してもらいましょう。

傷病手当金の算出方法
1日あたりの傷病手当金の額

「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した金額」÷30日×2/3

!CheckPoint!
◆計算が複雑そうですが1日分の給料の3分の2くらいの金額と考えましょう◆

②支給期間のカウント方法

この1月1日から、傷病手当金のサポート力が向上しました。私傷病で働けなくなったときの生活を保障してくれる大切な制度ですので、ぜひ内容をご確認ください。
変わったのは、支給期間のカウント方法です。旧ルールでは、傷病手当金の支給が開始されてから暦の上で1年6ヶ月までしか支給されませんでした。しかし、1月1日から開始された新ルールでは、「1年6ヶ月分」支給されるというカウント方法に変わります。

支給期間のカウント方法の具体例

2020年6月28日に療養を開始したA社Bさんの場合
*2020年6月28日から、私傷病による療養のため働けなくなる

*2020年7月1日まで連続して4日間働けなかったため、同日より傷病手当金の受給開始

Bさんには旧ルールが適用され、暦の上で1年6ヶ月までしか支給されません。つまり、2022年1月1日以降同一の私傷病で働けなくても、2021年12月31日で支給がストップしてしまいます。2021年12月31日までの間に復職していた期間があったとしても、支給期間は最長で2021年12月31日までです。

2020年6月29日に療養を開始したA社Cさんの場合
*2020年6月29日から、私傷病による療養のため働けなくなる

*2020年7月2日まで連続して4日間働けなかったため、同日より傷病手当金の受給開始

Cさんには新ルールが適用されて、最大「1年6ヶ月分」支給されます。Cさんは2020年7月2日から傷病手当金の受給を開始したので、最大で549日分の傷病手当金を受給できるのです(2020年7月2日から1年6ヶ月後の2022年1月1日までの日数が549日間)。たとえば、Cさんは2021年2月の28日間と2021年7月の31日間、計59日間復職していたとします。2022年1月1日までに490日間傷病手当金を受給したとしたら、1月2日以降もまだ59日間分の傷病手当金を受給できます。

!CheckPoint!
◆BさんとCさんの療養開始日は1日しか違わないのに適用されるルールが異なる◆
Bさんが傷病手当金の受給を開始した2020年7月1日から1年6ヶ月後の2021年12月31日は、新ルールがスタートする2022年1月1日より前だから。「1年6ヶ月分」傷病手当金を受給できるのは、2020年7月2日以降に傷病手当金の受給を開始した人。支給開始日をよく確認しましょう。

◆旧ルールでは途中で復職していた期間が考慮されない◆
支給開始から1年6ヶ月後には傷病手当金がストップ。新ルールでは復職した日数分はトータルの日数から控除される。復職した期間があるなら、1年6ヶ月後以降も傷病手当金が支給されるのです。

◆病気やケガの実態と業務の折り合いがつけやすく変更◆
旧ルールでは、傷病手当金をめいいっぱいもらおうと思えば「一度受給が開始されたら途中で復職しない方がよい」という考え方も。新ルールなら病気やケガの実態に合わせて「一時的または断続的復職が可能かどうか」を検討できる。

③休職制度は就業規則に記載しておこう

私傷病で働けなくなったときには、主治医からの診断書の内容に基づいて休職させ、休職期間について傷病手当金を申請するという流れが原則です。休職制度は法律で決まっているルールではなく、各社で決める必要があります。たまにしか発生しないようなトラブルだからこそ、休職制度のルールは就業規則に記載しておくことが大切です。

休職制度と就業規則に関するQ&A

Q:休職制度について就業規則に書いておくべきことは何ですか?

A:主に以下のようなことを記載しておきましょう。
・どんなときに休職を命じるか
・休職期間はどのくらいの長さか
・休職期間中のお給料や社会保険料の取り扱い
・休職期間中の連絡方法
・休職期間が満了して復職できないときの取り扱い

Q:どんなときに休職を命じると書いておくとよいでしょうか?

A:「精神または身体上の疾患により通常の労務提供ができず、その回復に一定の期間を要するとき」などと記載しておきましょう。

Q:休職期間はどのくらいの長さに設定するとよいでしょうか?

A:各社で異なってはいますが、最短を3ヶ月に設定し、勤続年数が長くなるごとに休職期間も長く設定している会社が多いようです。

Q:休職期間中のお給料や社会保険料については何を書けばよいでしょうか?

A:休職期間中に会社はお給料を支払うのかどうかを明記しておきましょう。なお、「ノーワークノーペイ」の原則により、休職期間中の賃金支払い義務はありません。また、社会保険料については、「指定の期日までに所定の口座に振り込むこと」などと記載しておきましょう。

Q:休職期間中の連絡方法については何を書けばよいでしょうか?

A:「会社が従業員に対して報告を指示した場合には、その内容を報告しなければならない」などと記載しておきましょう。

Q:休職期間が満了したときについては、何を書けばよいでしょうか?

A:「休職期間が満了しても復職できないときは当然退職とする」などと記載しておきましょう。なお、休職期間満了による当然退職の場合は、通常の自己都合退職とは異なり、2ヶ月間待つことなくすぐに失業手当を受給できます。


以上、傷病手当金の支給期間のカウント方法と休職制度の就業規則への記載方法について紹介しました。ご不明な点などございましたら、いつでもお問い合わせください。

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