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産業医 関谷 剛 メッセージ

コロナ禍で56%の医師が懸念する病気「脂肪肝」

統括産業医の関谷です。

コロナウイルス感染症は2022年に入り、ついに第六波まで続き、1月下旬からはオミクロン株の感染が急増、感染が広まり始めて2年近くが過ぎ、企業活動も家庭での生活スタイルも大きく変化したと改めて思います。特に感染への危険から、事業所への通勤から在宅ワークへの切り替えに、プライベートでも旅行や運動を控えるようになり、運動不足になりがちです。

一般社団法人日本生活習慣予防協会が昨年末に公表した調査結果によると、感染拡大後に「4人に1人は体重増加を実感」、約3割の人が「運動機会の減少」を実感しており、医師の56%が「脂肪肝の疑い」が増加していると回答しています。[※1]

運度不足や食事の変化によって心配される「脂肪肝」でも、過食によって発症する『NASH(ナッシュ)』について取り上げたいと思います。

[※1]一般社団法人日本生活習慣病予防協会「新型コロナウイルス感染拡大の陰で起きている体調変化や生活習慣に関する最新調査」2021年11月10日より

1:そもそも「脂肪肝」とは?

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪がたまった状態のことを言います。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪につくり替えられ、体にたくわえられます。中性脂肪は腸間膜(内臓脂肪)や皮下脂肪組織にたくわえられるほか、肝臓にも貯蔵され、肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
肝臓にたまる脂肪そのものは内臓脂肪から区別されますが、脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しており、脂質異常(高中性脂肪・高LDLコレステロール・低HDLコレステロール)を起こしやすく、動脈硬化の重要な原因になり、糖尿病を合併する人も少なくありません。脂肪肝の初期にはほとんど症状はありませんが、放置するとやがて肝炎を起こし肝硬変に進行することもあります。

2:実は多い、「飲酒しない人」の脂肪肝

「脂肪肝」の原因のほとんどは過食と多量飲酒ですが、糖尿病・ステロイド剤の服用・栄養障害による代謝異常なども原因になります。特にアルコールではなく過食が原因で脂肪肝から肝炎・肝硬変となる病気は『非アルコール性脂肪肝炎(NASH: nonalcoholic steato-hepatitis)』と呼ばれ、注目されています。「NASH」は、男性がなりやすいのが特徴ですが、女性の場合も、更年期を迎える50歳以降になると増加し、60歳でピークになるといわれています。

◆お酒を飲まない人の脂肪肝、「NASH」の方が危険

お酒の飲み過ぎが肝臓に悪いことは一般的に知られています。しかし、実は日本人の脂肪肝の原因で多いのは、飲み過ぎではなく、食べ過ぎによるものです。これを「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼びます。
「NAFLD」には、症状が軽く改善しやすい「単純性脂肪肝(NAFL)」と重症タイプの「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」の2種類があります。「NASH」は放置すると肝硬変、肝細胞がんへと進行することが知られています。また、「NAFL」も「NASH」に進行することがあります。脂肪肝の人が全員、重症化するわけではありませんが、早期に発見して、原因となる生活習慣や肥満を改善し、経過観察をすることが重要です。

◆疲れやすい、肩がこる、頭がボーッとするなどの症状も

従来、脂肪肝は肝臓に中性脂肪が蓄積するだけで心配のない病気と考えられていましたが、「NASH」への進行のほか、狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併率が高く、生活習慣病の温床となることがわかってきました。
脂肪肝には痛みなどの自覚症状がありません。ただ、脂肪肝になるといわゆる「ドロドロ血」になり血流が悪くなるため、全身の細胞に酸素と栄養分が補給されなくなり、疲れやすい、肩がこる、頭がボーッとするといった症状が出ることもあります。
思い当たる人は、血液検査を受けてみましょう。健康診断の結果を見直してみるのもよいでしょう。肝機能を表すALT(GPT)の基準値は30(IU/L)以下ですが、20(IU/L)以上であれば脂肪肝予備軍と考えられます。

3:「脂肪肝」の予防とヘルスケア

生活習慣が原因の脂肪肝は、生活習慣を改善すれば治ります。食事療法、運動、禁酒を行い、肝臓にたまった中性脂肪を減らし、肝機能の回復を目指しましょう。
内臓脂肪や皮下脂肪と違って、肝臓についた脂肪はとれやすいのですが、一方で脂肪は肝臓からつくという特徴があります。一時的に脂肪が減っても、生活習慣が元に戻れば再発します。再発した脂肪肝は「NASH」に進みやすい傾向があるので、悪い生活習慣を断ち切るようにしましょう。

◆果物やごはん、パン、麺類など糖質を摂り過ぎない

脂肪肝の治療のための食生活改善というと、まず脂っこいものを減らすと考えがちですが、それ以上に気を付けたいのは糖質です。日常的に糖質を摂り過ぎていると、脂肪肝になりやすいことがわかっています。特に果物の果糖は吸収がよく、肝臓で中性脂肪になりやすいため、注意が必要です。
果物は、旬の味わいとして楽しむ程度がオススメですが、毎日食べたい人は1日に1/2個を目安にして、朝食時に食べましょう。

◆野菜→たんぱく質→炭水化物の順番に食べる

食事によって血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが大量に分泌されます。インスリンは余った糖を中性脂肪として蓄えるため、脂肪肝を防ぐには、血糖値を急激に上げないことが大切です。
野菜のおかず→肉・魚のおかず→ごはん(炭水化物)の順番に、よく噛んで食べれば、血糖値の上昇が穏やかになり、インスリンの分泌が抑えられます。

◆「スクワット&片足立ち」で筋肉をつけ太りにくい体に

食事によって血糖値が急上昇すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが大量に分泌されます。インスリンは余った糖を中性脂肪として蓄えるため、脂肪肝を防ぐには、血糖値を急激に上げないことが大切です。
野菜のおかず→肉・魚のおかず→ごはん(炭水化物)の順番に、よく噛んで食べれば、血糖値の上昇が穏やかになり、インスリンの分泌が抑えられます。
■スクワット■
足を肩幅に開き、背筋を伸ばして両手を前に伸ばす。5秒で腰を落としてお尻を突き出す。太ももに力を入れ、5秒で元の姿勢に戻る。これを5回繰り返す。お腹を凹ませるよう意識すれば、より効果的。
■片足立ち■
床から5~10㎝程度、右足を上げて1分間片足立ちをする。次に左足も同様に行う。バランスをとりにくい場合は、テーブルなどに軽く手をついてもOK。最終的に手を放して行えることを目標に。

4:脂肪肝・NASHで参考になるサイト

日本肝臓学会のサイト
一般社団法人日本肝臓学会のサイトでは、肝臓病の患者に向けて新型コロナウイルス感染対策や感染した場合の対処について情報を公開しています。現在肝臓病を患っている方、お悩みの場合は一読をお勧めします

国立国際医療研究センターのサイト
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センターが開設しているサイトに医学的な見知から「NASH(非アルコール性脂肪性肝疾患)」について症状から原因、治療法が書かれていますので、ぜひ参考にしてください。

日本消化器病学会のサイト
一般財団法人日本消化器病学会では、サイト内に「NAFLD/NAFHガイド」というページを設けて、それぞれの病気の違いから、症状や治療などについてイラスト入りで分かり易く解説しています。自分の症状がどちらの病気に該当するのか、心配なときはアクセスして参考にして下さい。

あとがき

肝臓は沈黙の臓器と言われている通り、他の肝臓病と同様に脂肪肝は「NASH」も「NAFLD」もほとんど自覚症状はありません。20歳の時よりも体重が10kg以上増え、お腹周りが気になる方は、腹部エコー検査を受診して、肝臓を診て貰うようにしましょう。

統括産業医 関谷剛

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