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労務のハナシ

~毎年9月は『職場の健康診断実施強化月間』~

みなさんこんにちは。特定社会保険労務士より『労務のハナシ』第1回をお届けします。
先日100円ショップへ足を運んだところ、すでにハロウィングッズが並んでいました。季節のイベントは、先取りが命ですね。

労務に関する10月のイベントは、残念ながらハロウィンではありません。毎年10月には、厚生労働省が「全国労働衛生週間」を実施しています。2021年は、10月1日(金)から10月7日(木)までです。年末に向けて改めて、従業員の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する意識を高め、従業員の健康を確保することなどを目的として実施されています。なんと、1950年(昭和25年)から毎年実施されているようです!

POINT「毎年10月は全国労働衛生週間」
・2021年10月1日〜10月7日
・厚労省が事業場に対して健康管理や職場環境の改善を促進
・参考:厚生労働省「令和3年度『全国労働衛生週間』を10月に実施」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19768.html

本番には準備がつきもので、毎年9月1日から9月30日までが「全国労働衛生週間準備期間」です。
準備期間に行うべきことの一つが、「健康診断の適切な実施、異常所見者の業務内容に関する医師への適切な情報提供、医師からの意見聴取および事後措置の徹底」です。そのため、毎年9月は「職場の健康診断実施強化月間」と位置づけられています。

健康診断の実施とその後の適切な対応は、従業員の健康管理のためにはマストです。

実施すべき具体的な事項は、主に以下の4つです。
① 健康診断および事後措置等の実施を徹底する
② 健康診断結果の記録の保存を徹底する
③ 一般健康診断結果に基づく必要な労働者に対する医師・保健師による保健指導を実施する
④ 新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて健康診断を実施する

① 健康診断および事後措置等の実施を徹底する
常時使用する労働者(※)に対しては、1年以内ごとに1回、定期に、健康診断を実施しなければなりません。(労働安全衛生法第66条1項、労働安全衛生規則第44条)
健康診断の結果、「要再検査」「要治療」「要経過観察」など、異常の所見があると診断された場合には、産業医などの医師または歯科医師の意見を聴きます。(労働安全衛生法第66条の4、労働安全衛生規則第51条の2)
この意見を踏まえて、会社として必要だと判断したときには、その従業員に対して以下のような適切な措置を講じる必要があります。
・就業場所の変更
・作業の転換
・労働時間の短縮
・深夜業の回数の減少など

※常時使用する労働者
参考:東京労働局「Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/roudouanzeneisei/q16.html

② 健康診断結果の記録の保存を徹底する
健康診断の結果は、きちんと記録しておき、健康診断実施後5年間保存する必要があります。(労働安全衛生法第66条の3、労働安全衛生規則第51条)
記録の形式は問いませんが、様式第5号「健康診断個人票」(※)にある項目が記載されているか、改めて確認してください。

※様式第5号「健康診断個人票」
参考:福井労働局「様式第5号」
https://jsite.mhlw.go.jp/fukui-roudoukyoku/var/rev0/0110/4068/2011518134157.pdf

③ 一般健康診断結果に基づく必要な労働者に対する医師・保健師による保健指導を実施する
健康診断の結果、とくに健康の保持のために努力する必要がある従業員に対しては、医師または保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。(労働安全衛生法第66条の7)
とくに、40歳〜74歳の従業員は、メタボリックシンドロームに関する「特定健康診査」を受けることができます。たとえば、医師や保健師の指導により、当該従業員の生活習慣を踏まえて目標を設定したり、継続的なサポートを受けたりすることができます。保健指導の実施は努力義務ではありますが、従業員の健康状態は生産性や労働災害に影響することが考えられますので、重要な事項です。

④新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて健康診断を実施する
新型コロナウイルス感染症の影響で、やむを得ず健康診断の時期をずらすなどの対応をされた企業様も多かったのではないかと思います。
感染症の罹患も心配ですが、その他の疾病も同様に心配すべきものです。
必要に応じて健康診断を実施している機関に感染予防対策などを確認し、健康診断の受診を躊躇する従業員に対しては感染症予防と同様に健康診断の受診も重要であることを説明し、できるだけ早期に健康診断を実施できるよう計画を立てることが重要です。

POINT「毎年9月は職場の健康診断実施強化月間」
・9月は全国労働衛生週間のための準備期間
・健康診断の適切な実施、異常所見者の業務内容に関する医師への適切な情報提供、医師からの意見聴取および事後措置の徹底を行う
・参考:厚生労働省「『職場の健康診断実施強化月間』について」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20331.html

このように、健康診断・事後措置の徹底等を毎年のイベントとして定着させるには、安全衛生委員会等のテーマに組み込むことが簡単だと思います。

その他、就業環境や生活環境が大きく変わる中で、健康障害のリスクを減らすためには、日々の従業員とのコミュニケーションが重要だと思います。
そのために重要な事項は、以下の3つだと考えます。
① 相談窓口が機能しているか見直そう
② 産業医に頼ろう
③ 助成金を活用しよう

① 相談窓口が機能しているか見直そう
セクハラ、マタハラ、パワハラなどのハラスメント防止措置として、相談窓口を設けることが義務づけられています。
中小企業は、パワハラについては現在努力義務ですが、2022年4月1日に義務化されます。「相談件数がゼロ=ハラスメントがゼロ」ではないはずです。
在宅勤務で従業員同士のコミュニケーションの仕方が変わっていたり、感染症の流行により生活習慣が変わっていることもありますから、改めて、自社の相談窓口が機能しているのかを見直すことが大切だと考えます。

②産業医に頼ろう
常時使用する労働者が50人以上の事業場では、産業医を選任する義務があります。
ただし、50人未満であっても従業員の健康トラブルは、生じてきます。
業務遂行や労務管理は、社長様や人事担当者様がプロですが、従業員の健康管理においては、判断に迷う場面もあるのではないかと思います。
重大なトラブルに発展してしまう前に、リスク管理として、日頃から産業医の先生との信頼関係を築いておくことが大切だと考えます。

③助成金を活用しよう
とはいえ、50人未満の事業場では産業医の選任は法的な義務でもないのに、選任のためのコストを割り当てるのは難しいかもしれません。
そんな企業様のために、産業医や保健師に、職場巡視や健康診断に関する意見聴取、保健指導などの産業医活動を6ヶ月以上継続的に委託した場合などには、6ヶ月当たり一律10万円が最大2回支給されるという助成金があります。
正式名称は、「小規模事業場産業医活動助成金」(※)といいます。このような助成金をうまく活用して、従業員の健康確保に取り組んでいきましょう!

※小規模事業場産業医活動助成金
参考:独立行政法人労働者健康安全機構「産業保健関係助成金」(https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/tabid/1251/Default.aspx

POINT「健康診断と労務管理」
・健康診断や事後措置の徹底等を安全衛生委員会等のテーマにする
・その他健康障害のリスクを減らすには、①相談窓口を機能させること、②産業医を選任すること、③助成金を活用することが大切

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