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勤怠管理は労務管理の基本〜社労士からのアドバイス

今年も終わりが近づいてきましたが、最近、このような相談を受けました。
「ある従業員が遅刻や欠勤を繰り返しているのですが、どうしたらよいでしょうか?」

この従業員の方は、人懐っこくて人間関係を築くのが上手とのこと。
「遅刻や欠勤が多いようだから気をつけるように」と伝えると、愛想のよい返事は返ってくるようですが、一向に改善されないそうです。
周囲も、「あの人は仕方ない」と見ている人もいれば、「ルールは守るべきだ」と考えている人も出てきているとのことでした。

このように、とある従業員に勤怠の乱れが生じてきたときに行うべき、基本的な対応方法がありますので、紹介します。

①口頭での注意方法

従業員が業務を行う上で何か問題を起こしたときには、まず口頭で「注意」「指導」をすることが原則です。

注意・指導を行うベストなタイミングは、問題が生じた直後です。
注意された本人は悪気がない可能性がありますので、このタイミングを逃すと、何が問題であったか本人の記憶が薄れてしまいます。
もちろん、お客様の前であって注意できない場合もあると思いますが、そうした場合でも、顧客対応が終わったらすぐに問題点について注意するようにしましょう。

注意・指導する場所で避けるべきなのは、同僚やお客様が見ている・聞いている場所です。多くの人が周囲にいる状態で行うと、問題点を指摘するだけでなく、面目をつぶすという要素が加わってしまいます。これが繰り返されるとパワハラに該当しかねません。
また、業務に関することなので、基本的には就業時間中に注意・指導を行うべきでしょう。

とくに今回のケースのように、遅刻や欠勤について「気をつけて」と伝えても愛想よく話をそらすような方には、曖昧に伝えるのではなく、以下のようにある程度厳しく・根拠を示して注意するとよいでしょう。

具体的な伝え方:
・同僚など、周囲に悪い影響を与えている
・会社の規律を乱している
・就業規則や服務規律の◯条に違反している
・時間通りに業務遂行しないのは契約違反である
・始業時間に間に合うよう余裕を持って通勤するように
・(電車通勤ならば)遅延証明書を提出するように

!CheckPoint!
◆けん責・訓告・訓戒はNG◆
注意・指導は、「けん責」「訓告」「訓戒」といった処分には当たりません。
その従業員の遅刻や欠席により会社に多大な損失をもたらした、といったレベルでなければ、社内ルールにのっとった正式な処分だと「重すぎる」と判断される可能性があるので気をつけましょう。

②書面での注意方法

口頭の注意・指導で改善されない場合、次に行うべきなのは書面で改善を促すことです。
口頭での注意よりも、厳しさがより伝わるでしょう。
この「注意指導書」は、もしこれで改善しなければ、「けん責」「訓告」「訓戒」といった正式な処分を検討するための「布石」としても機能します。

注意指導書を渡すときに署名をさせるのも、深刻さが増すといった効果があると思います。
ただし、口頭での注意・指導と同じく、まだ正式な処分ではなく強制力はないため、あくまで確認のためのサインでしかありません。

注意指導書に記載する事項は、具体的には以下のようなことです。

具体的な記載事項:
・すでにこれまで複数回口頭で注意をしてきたが改善されないこと
・◯月◯日に、◯分無断遅刻、無断欠席をしたこと
・無断遅刻や無断欠席により、支障を来した業務内容
・書面でも改善されない場合には、就業規則◯条にのっとった処分をする可能性があること

!CheckPoint!
◆懲戒処分はNG◆
繰り返しになりますが、注意・指導は社内ルールにのっとった正式な処分、つまり、「懲戒処分」ではありません。
欠勤や遅刻を繰り返しているというレベルであれば、会社に多大な損失を与えているわけではないので、いきなり懲戒処分を行うのは適切ではないと考えます。

そのため、口頭や書面での注意・指導の過程で、本人に「始末書」は書かせないようにしてください。
なぜなら、「『始末書』を書かせる」ことは、「けん責」「訓告」「訓戒」といった懲戒処分に当たってしまうからです。
もし欠勤や遅刻に対して一度懲戒処分をしてしまうと、その後同じ理由で懲戒処分を行うことができなくなります。

欠勤や遅刻という程度の問題であれば、必ず口頭での注意・指導、書面での注意・指導を繰り返し行って、それでも改善されないときに、初めて軽めの懲戒処分を行うか検討するようにしましょう。

◆5W1Hメモを忘れずに◆
①②に共通して、注意・指導の経緯は全て記録しておいてください。
口頭での注意の経緯を注意指導書に書くこともありますし、全く改善されないときに懲戒処分を検討するときにも、この記録が必要になってきます。
「何か問題が起きたら5W1Hでメモ」は、労務管理においても大切なことです。

③年次有給休暇を取得したいと言われたら

注意・指導の過程で、気をつけていただきたいポイントがもう一つあります。
「年次有給休暇(年休)を取得したい」と言われたときの対応です。
従業員にとっての年休取得の権利は強いものなので、人事担当者からも「取得を認めるべきなのか、認めなくてもよいのか、どちらでしょうか?」といった質問をいただくことがあります。

まず、認めなくてもよいパターンは、取得を申し出るタイミングが遅い場合です。
年休の取得単位は、原則「1日(0時〜24時)」なので、取得する前日の日付が変わる24時までに取得を申し出ていなければ、認める義務はありません。
日付が変わるギリギリに連絡があったとしても、問題行動を繰り返している従業員であれば、「就業規則には、申し出は◯日前までと書いてある、だから認められない」といった強い対応も検討するべきでしょう。
半休や時間単位年休についても、就業規則で定めたルールを守っていなければ、原則、取得を認める義務はありません。

一方で、認めなければならないのは、申し出のルールを守っている場合です。
この場合は、勤怠に問題があって、何度注意しても改善されないといった感情の部分は横に置いておかなければいけません。
取得を認めないとか、取得理由をしつこく尋ねることもしてはいけないのです。

!CheckPoint!
◆欠勤=年休処理はNG◆
取得の申し出がないのに、欠勤したからといって、勝手に年休処理をすることはNGなので気をつけましょう。
年休はあくまで、従業員の申し出によって取得させるものだからです。
遅刻や欠勤についてルールに基づいた年休取得の申し出がない場合、あるいは、年休の残日数がない場合には、就業規則や賃金規程の定めの範囲内で遅刻控除や欠勤控除をすることは可能です。

④RW時代の勤怠管理

リモートワークが普及するなか、様子が見えない状況で勤怠管理をしなければいけないことも増えています。
パソコンの挙動を記録するソフトやパソコンのカメラを導入して監視するケースもあるようですが、労務管理の基本は「会社と従業員との信頼関係」によると思います。
会社に出勤していたとしても、トイレに行ったり作業中に休憩を取ったりすることはありますし、また、パソコンでの作業を全て観察しておくこともできません。
リモートワークをさせる以上は、「成果が出ること」と「会社のルールを守らせること」のバランスを取ることが大切だと思います。

!CheckPoint!
◆RW中放置はNG◆
「家で仕事をしていて成果も出ないし、何をしているか分からない」といった状況で、何もしないことも適切ではありません。
周囲のモチベーションを低下させることにもなりますし、一度楽してしまった人に厳しく成果を出させることは難しくなってしまうでしょう。
リモートワークであっても、始業・終業時刻を記録し、業務や成果の報告をさせ、業務上問題があれば注意・指導する、注意・指導の経緯は記録しておくという対応をするべきだということに、変わりはないのです。

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