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福利厚生=休みを増やして!?〜選択的週休3日制の導入ポイント〜

働き方改革により時間外労働に上限規制が設けられてから3年以上が経ちました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅勤務の普及や、副業解禁の流れも相まって、長時間働くことはますます問題視されるようになっています。
短時間で効率的に働き成果を上げることが評価されるような傾向にあり、選択的週休3日制を導入する企業も出てきています。
今回は、選択的週休3日制の導入事例や運用のポイントを紹介しますので、長時間労働時間の削減やモチベーションの維持・管理などの参考にしてください。

①休みが多い会社はいい会社?

2022年7月に行われた福利厚生に関するあるアンケート調査で、従業員が会社に積極的に取り組んでほしい福利厚生施策ジャンルの第1位は「休暇」という結果になりました。ちなみに第2位は「健康増進」、第3位は「働き方」です。
ここでいう「休暇」とは年次有給休暇のことではなく、リフレッシュ休暇・病気休暇・夏季特別休暇などいわゆる特別休暇のことを指します。
「特別休暇には給与を支給しなければなりませんか」という質問をよくいただきますが、特別休暇を取得した日に給与を支給しなければならない法的な義務はありません。
「特別休暇」はその名の通り特別なものなので、従業員に必ず付与しなければならないという決まりはなく、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるからです。
そのため、特別休暇の制度を設けるか設けないか、特別休暇の要件をどのように設定するか、特別休暇の日数は何日にするかなどは、自社で自由に決めていただいて構いません。

日本は諸外国と比べると労働時間が長いことが問題視されていますが、一方で休日数は多いと言われています。ただし、年次有給休暇の取得率は年々上昇してはいるものの、比較的低くなっています。上記のアンケート調査の結果を踏まえると、一年中働き詰めでいるのではなく適度に休みを取りながら働くというスタイルが求められているのかもしれません。

参考:Utilly「福利厚生に関するアンケート調査(2022年7月)」

②選択的週休3日制の2タイプ

長時間労働が問題視されるなか、「選択的週休3日制」を導入する企業も出てきました。6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2022」でも、選択的週休3日制の導入を促進して普及を図る旨が述べられています。
そもそも選択的週休3日制とは、希望する労働者に対して週3日の休日を付与する制度のことです。選択的週休3日制の種類は、大きく分けて(A)総労働時間短縮型(B)総労働時間維持型の2つです。

(A)総労働時間短縮型
総労働時間短縮型は、1日の労働時間を維持したまま休日数を増やすタイプです。休日が増えるため、総労働時間は短縮されます。
たとえば1日8時間・週の所定労働時間40時間を1日8時間のまま完全週休3日制にした場合、週の所定労働時間は32時間と短くなります。
(A)の場合はトータルの労働時間が短くなるため、給与を減額するのか維持するのかを検討しなければなりません。

(B)総労働時間維持型
総労働時間維持型は、1日の労働時間を増やして休日数を確保するタイプです。1日の労働時間を増やすため、総労働時間は維持されます。
たとえば1日8時間・週の所定労働時間40時間であるところ、1日10時間・完全週休3日制にした場合、週の所定労働時間は保たれます。
(B)の場合は1日8時間の法定労働時間を超えてしまうため、変形労働時間制の導入が必要です。

③選択的週休3日制の導入事例

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると、完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度を導入している企業は8.5%にとどまりますが、年々増加しています。選択的週休3日制を導入するかどうか検討するための材料として、2つの導入事例を紹介します。

参考:『労政時報』第4023号/21.10.22

<メタウォーター株式会社>
東京都千代田区に本社を置き、浄水場向け設備の設計・建設などを行う会社。従業員数は3,496人(連結)です。
コアタイムなしのフレックスタイム制をベースに、所定労働時間と賃金を維持したままの週休3日制の導入を実現しました。週休3日制の適用権限は会社・ライン監督者が持つようにしています。週休3日制の導入はあくまでも働き方改革の一環であって、その他サテライトスペースの設置やリモートアクセスツールの支給など、リモートワークも促進しています。
本格導入の前に1年間のトライアル期間を設け、少しずつ使いやすい仕組みに変えていったことがポイントです。

<エンカレッジ・テクノロジ株式会社>
東京都中央区に本社を置き、コンピュータシステムソフトウェアの開発・販売などを行う会社。従業員数は約138人(連結)です。
1ヶ月単位の変形労働時間制をベースに、時差勤務・在宅勤務・半日勤務なども組み合わせて週休を1日〜3日にすることができる制度としました。従業員が部門内で管理職に勤務希望を提出し、人事部門が確認して翌月のシフトが決定されます。感染症が流行しているなかでもコミュニケーションロスを減らして業務効率を上げることを目的に導入されました。
制度の具体的な運用方法を徹底して周知したことがポイントです。口頭説明だけではなくQ&Aを作成して知見を蓄積し、疑問点から逆引きできるマニュアルを整備しました。定期的にアンケートを実施して現場の課題点などを集めています。

会社の規模や業種などから、完全に真似することは難しいかもしれませんが、制度の導入目的やポイントなどを参考にしてみてください。

④選択的週休3日制の運用ポイント

従業員が福利厚生施策のなかで力を入れて欲しいと考えているジャンルが休暇とのことですが一つのアンケート調査結果であって、希望にしかすぎないとも言えます。
原則1日8時間・週40時間の法定労働時間や週1日の休日、時間外労働の上限規制などのルールを守っていれば、法律を上回る休暇や休日を付与しなければいけない義務はありません。つまり、選択的週休3日制は必ず導入しなければならない制度ではないことにご留意ください。
上記の導入事例やつぎに紹介するメリット・検討手順を参考としつつも、自社の実態に合っているかどうかを考えることが最も重要です。

<選択的週休3日制のメリット>
•労働時間を削減して全体の雇用量を維持できる
•従業員の仕事とプライベートの両立を支援できる
•学び直しの時間を確保して従業員の能力向上や経験蓄積を期待できる

<検討手順>
•組織単位で導入するのか個人単位で導入するのかを検討する
•総労働時間短縮型・総労働時間維持型のどちらを採用するか決める(労働日を減らして週の所定労働時間を減らすか、1日当たりの労働時間を増やして週の所定労働時間を維持するか)
•週の所定労働時間を減らす場合は賃金制度・評価制度をどうするかを検討する

選択的週休3日制の発案はトップからなされることも多いかもしれません。検討するのは人事部門が中心になるでしょう。しかしながら、人事部門だけで導入・運用することは難しく、トライアルを積み重ねながら現場を巻き込んでいく必要があると思います。

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