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高齢者の雇用状況等報告書と再雇用時のチェックポイント

ハローワークから「高年齢者雇用状況等報告書」の提出依頼が届いた企業さまは7月15日までに提出しなければなりませんが、お済みになりましたか?
高年齢者雇用状況等報告書の提出自体は単なる手続きであると言えますが、これを機会にあらためてご確認いただきたい最近の法改正事項や気をつけていただきたいポイントがあります。
高齢化率が上昇しつづけ、年金受給開始年齢も引き上げられつづけている状況では、高齢の方々に働いてもらうときにしっかりと対応することが大切です。
高年齢者雇用状況等報告書の内容や最近の法改正、気をつけたいポイントについて紹介しますので、高齢者の労務管理にお役立てください。

①高年齢者雇用状況等報告書とは

「高齢者雇用状況等報告書」は、企業における高齢者の雇用や制度の状況を報告するための書類のことです。
東京労働局によると、従業員が20人以上の企業に高齢者雇用状況等報告書の提出依頼の書類が郵送されてきます。
提出しなかったとしても罰則を課せられるわけではありませんが、高年齢者雇用安定法により従業員を雇用する企業は提出が義務づけられていることから、指導の対象になることは考えられます。
報告書に記載する具体的な事項は、以下の通りです。

  • 定年制の状況
  • 定年後の継続雇用制度の状況
  • 創業支援等措置の状況(※1)
  • 66歳以上まで働ける制度の状況
  • 常用労働者数・過去1年間の離職者数
  • 過去1年間の定年到達者数
  • 2012年改正法の経過措置に関する過去1年間の適用状況
  • 70歳までの就業確保措置に関する過去1年間の適用状況(※1)
  • 高年齢者雇用等推進者の役職・氏名(※2)

※1と※2は、高年齢者雇用安定法に定められた企業の努力義務に関する項目です。
「高年齢者雇用等推進者」とは、高年齢者の雇用確保措置を推進するために選任するよう努めるべきとされている担当者のことです。
※1は、昨年の法改正に関連する内容でもあります。次の②で解説します。
参考:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告書及び記入要領等」

②最近の法改正をチェック~就業機会確保~

高年齢者雇用状況等報告書を記入するにあたり、2021年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法の内容をおさらいしましょう。
2013年に開始された65歳までの雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの「就業機会の確保」が努力義務として新設されました。

就業機会の確保とは、以下のいずれかの措置を講ずることを言います。

    1. 70歳までの定年の引き上げ
    2. 定年制の廃止
    3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
    4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
    5. 70歳まで継続的に<事業主が自ら実施する社会貢献事業>または<事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業>に従事できる制度の導入

    ①の※1でいう「創業支援等措置」とは、4の「業務委託」5の「社会貢献事業」のことを指します。
    現在は努力義務なので、いずれの措置も講じていなくても法的には問題ありません。
    ただ、年金の受給開始年齢の引き上げが予想され、つぎに説明するとおり高齢者雇用継続給付も縮小されることが予定されているなか、努力義務が義務になる前に対応しておくことは、高齢者の能力を活用するための利点になると考えられます。
    就業機会の確保を行うには人件費が増加する可能性があります。そのため、自社においてどのくらいの人数の高齢者の雇用しつづけていくのか、再雇用制度から定年引き上げに変更して高齢者のモチベーションアップを優先するのか、退職金制度の内容を変更する必要があるのかなどを検討し、総人件費の変化をシミュレーションすることが重要です。
    なお、退職金制度の内容を変更する場合には重要な労働条件の変更になりますので、従業員の個別同意による変更が原則となります。

    ③最近の法改正をチェック~高年齢者雇用継続給付~

    雇用保険から支給される「高年齢者雇用継続給付」が2025年4月1日から縮小されることが予定されています。
    予定されている改正内容は、以下のとおりです。

    <改正前>
    60歳以後の賃金額が「60歳時点の賃金額」の75%未満の場合、65歳まで「60歳時点の賃金額」の15%を支給

    <改正後>
    60歳以後の賃金額が「60歳時点の賃金額」の75%未満の場合、65歳まで「60歳時点の賃金額」の10%を支給

    将来的には、年金の受給開始年齢が引き上げられるだけでなく、高齢者の雇用維持に充てられる雇用保険の予算も縮小されることになります。
    したがって、②に記載した「就業機会の確保」の努力義務化をきっかけに、自社における高齢者の活用や高齢者自身がどのように働いていくのかを熟思する機会の提供などについて検討し始めることが大切だと考えます。
    高齢者の活用や総人件費・人件費の割り当ての変更を検討するにあたっては、「高年齢労働者処遇改善促進助成金」を活用することが一つの方法です。
    高年齢労働者処遇改善促進助成金は、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇を改善するために高年齢労働者に適用される賃金規定などを増額改定する事業主が支給対象となる助成金です。
    詳細については、以下の参考URLをご覧ください。
    参考:厚生労働省「高年齢労働者処遇改善促進助成金」

    ④再雇用時の契約内容・長時間労働に注意

    高齢者の雇用に関して気をつけたいポイントは、再雇用制度を適用して契約を結び直すのなら相互に契約内容(賃金・出勤日数・健康保険の適用についてなど)を確認することと、長時間労働にならないよう気をつけることの2点です。
    再雇用後に同一労働同一賃金の議論に巻き込まれないためには、定年してから再雇用するときの労働条件の内容と変更点を企業と従業員の相互でしっかりと確認することが大切になります。
    とくに重点的に確認すべき項目は、賃金と労働時間です。賃金のなかでも手当の支給有無や金額が変更される場合には、齟齬のないよう丁寧に説明しましょう。雇用保険の「高年齢者雇用継続給付」にてどのくらい補填されるのかを説明に追加するとより丁寧です。再雇用後の従業員に適用される就業規則を正社員の就業規則と分けて作成しておくことも必要になります。

  • 各種保険の適用については、以下の通りです。

    <雇用保険>
    年齢にかかわりなく、原則として、31日以上引き続き雇用されることが見込まれており、週20時間以上勤務する場合は加入します。
    通常は1つの事業所で週20時間以上であるかどうかを判断しますが、65歳以上の従業員については、2022年4月1日より「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。これは、複数の事業所で勤務する65歳以上の従業員が、そのうち2つの事業所での労働時間を合計して週20時間以上勤務する場合に本人が申し出れば雇用保険の被保険者になれるという制度です。
    参考:厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」
    <健康保険>
    所定労働時間・日数が正社員と比較して4分の3以上(従業員500人超の企業では週所定労働時間20時間以上)の場合は、74歳までは原則として健康保険に加入します。75歳からは後期高齢者医療制度に加入することになります。
    <厚生年金保険>
    健康保険と同様、所定労働時間・日数が正社員と比較して4分の3以上(従業員500人超の企業では週所定労働時間20時間以上)の場合は、原則として厚生年金保険に加入します。ただし、年齢は69歳までです。
    なお、再雇用時に報酬が下がる場合、すぐに健康保険料・厚生年金保険料も下げられる「同日得喪」という制度が用意されています。
    参考:日本年金機構「60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。」

    高齢者の長時間労働による労災事故の発生リスクにもご注意ください。年齢を重ねるにつれて、長時間働くことによる脳・心臓疾患の発症率死亡率も増えるというデータがあります。定年前と同じくらい長時間高齢者に働かせることは、同一労働同一賃金と指摘されることだけでなく、労災事故の発生可能性を高める点においてもオススメいたしません。
    ご本人もまだまだ元気で、定年前と同じ水準で働きたいという要望もあるかもしれません。労働日数や労働時間が同じであっても賃金額に変更がないのであれば、一つには同一労働同一賃金の議論に巻き込まれるリスクは減らせますが、労災事故発生のリスクは残ります。
    したがって、自社における高齢人材が担当する仕事内容、役割、役職、労働時間、配置異動などを明らかにしたうえで、再雇用後の労働条件を変更する(賃金額を低下させる)のであれば、労働日数や労働時間も短く設定するということが原則的な対応になると考えます。

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