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労務のハナシ

社会保険労務士の得意な分野とは?

「社労士って何を仕事にしている人なの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
社会保険労務士という資格ができたのは、今から50年以上前の1968年です。
少しデータは古いのですが、2014年の調査では、56.4%の企業が社労士を利用していると回答しました。
しかしながら、産業医とは異なり、会社には社労士を選任する義務がないため、なじみがない方も多くいらっしゃるでしょう。
どんな場面で社労士に相談すればよいのか、どんなときに役に立つ知識を持っているのかが分からない、聞きにくいということもあると思います。
今回は、よく聞かれるけれど社労士が答えられない質問や社労士の活用場面について紹介します。
会社や職場でトラブルや困りごとが生じたら、相談先として社労士を検討してみてください。

①よく聞かれる!でも社労士が答えられない質問

社労士として会社の人事労務担当者さまの相談にのっていると、よく聞かれる、けれど答えられない質問を受けることがあります。
たとえば、以下のような質問です。

  • 給与計算をしているが所得税は◯円であっているか?
  • 源泉徴収票を作成してくれないか?
  • 年末調整の業務をすべて依頼できないか?
  • 退職金の支給における所得控除額はいくらか?

<回答できない理由>
こうした質問に回答することは、所得税などの税金を専門分野とする税理士の独占業務です。
会社の給与計算業務の委託先として税理士か社労士が選ばれることが多いため、こうした質問が社労士に寄せられることがあります。
しかし、社労士が税理士の独占業務である所得税等の質問に回答することは、税理士法に違反する行為となってしまうのです。
そのため、社労士には、上記のような質問には答えてもらえない可能性があります。

②社労士の得意分野とは?

たとえば給与計算について見てみると、「雇用保険料」「健康保険料」「厚生年金保険料」の計算等が社労士の専門分野です。
そのほか、以下のような業務を行っています。

  1. 労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の手続き
  2. 就業規則の作成
  3. 36協定などの労働法関係の書類の作成
  4. 障害年金の申請
  5. 会社と従業員のトラブルの仲介
  6. 労務管理に関する相談対応

1~4に関しては、報酬をいただいて業務を行えるのは社労士のみです。

<特定社労士ができること> 
あたまに「特定」とつく「特定社労士」は、ほかに裁判外紛争解決手続き(ADR)の代理業務を行うことができます。
裁判外紛争解決手続きの代理業務とは、労働局や労働委員会でのあっせんや調停の手続きの代理などのことです。
参考:全国社会保険労務士会連合会「紛争解決手続代理業務

③実際に多い相談例

社労士が経営者様や人事労務担当者様から日々受ける相談で最も多いのは、「相手にどのように伝えたらよいか?」ということでもあります。
労務管理に関して、会社から従業員に何かを伝えなければいけないとき、従業員から会社や上司に対して何かを伝えたいとき、どのように文章にしたり言葉にしたりすればよいかなどを聞かれます。
会社から従業員に何かを伝えるときには、特にハラスメントに当たらないかどうかを心配される方が多いため、場面に応じてどのような伝え方がよいかできる限り客観的な意見が述べられるよう努めています。
以下に、過去に実際あった相談例をいくつかご紹介しましょう。

Q:離れた事業場にいる従業員がいますが、全然働いておらず成果も出ていません。会社の大事なものも預けています。何と言って声をかけたらよいでしょうか?
A:
会社の大事なものを預けているのならなおさら、早めに注意をするべきです。言い方には気をつけなければなりませんが、業務を行わない従業員に普通に注意することはパワハラに当たらないので心配ありません。業務を行わない理由が怠惰によるものか体調不良によるものか分からないので、一度も声かけをしていないのでしたら、まずは調子を伺うような声かけをしてみてはいかがでしょうか。

Q:休職中の従業員がいますが、診断書を持ってきていません。電話で聞いたらさらに1ヶ月休みたいと言われたので休ませています。今は連絡をとっていません。現時点ではどのように動けばよいのでしょうか?
A:休職期間が終わる少し前に連絡をしましょう。従業員からアクションがなければ、事を大きくしたくない気持ちがあっても会社から連絡をするしかありません。体調が悪くて休んでいることが前提になるため、まずは体調を慮るような声かけをした方がよいです。その後、復職を希望するなら診断書が必要であること、本来休職する際にも診断書が必要であって今は特別に休ませてあげていることを伝えましょう。電話の方が楽なのかもしれないですが、言った言わないの水掛け論になる可能性があるため、メールでの連絡をおすすめします。

Q:休みがちだった従業員が、ある日を境に来なくなってしまいました。連絡をしても反応がありません。緊急連絡先は一応把握していますが、一度も連絡していません。今後どのように対応したらよいでしょうか?
A:緊急連絡先に一度は連絡した方がよいでしょう。何かのトラブルに巻き込まれた可能性もありますが、ご本人は辞めたつもりでいる可能性もあります。たくさんの従業員がいるなかで、この方1人のためにどの程度の手続き的コストをかけるかによってどれくらいのことをするかが変わります。緊急連絡先に連絡して、書面で本人に連絡しても反応がなければ、就業規則に基づいて粛々と退職手続きをとることも一つの方法です。

このように、就業規則などが定まっていても、実際に起きた状況に際して「どのような言葉をかければよいのか」と、とまどってしまう担当者様が少なくないのです。
もちろん、労働法関連の法律を守ることは大切ですが、人と人との信頼関係はコミュニケーションによって成り立つと考えます。よい意味で当事者ではない者として、客観的に、コミュニケーションの取り方をサポートすることが日常の相談業務では多くなっています。

④会社の規模と社労士への依頼内容

会社として社労士に顧問などを依頼する基準としては、会社(事業所)の規模が目安になります。
具体的には、以下のようなときに社労士への依頼を検討するきっかけとなるでしょう。

  • 社長のほかに1人雇ったとき雇用契約書の作成社会保険の手続きなどを依頼したい場合
  • 10人〜:就業規則の作成を依頼したい場合
  • 30人〜:手続きや給与計算をアウトソーシングしたい場合
  • 50人〜:労務問題や健康問題が発生するようになり、日常的に社労士に相談したい場合

これらはあくまで一つの目安でしかありませんが、会社の規模が大きくなると労務問題が発生しやすくなるので、トラブルを防いだり解消したりする際は社労士の活用場面になります。

<会社の規模以外の社労士活用要素>
労務問題が発生しやすくトラブルを防ぎたいというご要望としては、会社の規模のほか、業種も関わってくるでしょう。
身体を使うことが多い建設業や製造業、運送業、医療保健業、介護事業などは、過重労働防止や労災事故防止などの観点から、時間管理の方法や賃金体系などについてご相談をいただくことがよくあります。

まとめ

今回ご紹介した内容はあくまで一つの参考としていただき、「これを相談してもいいのだろうか、ダメなのだろうか」とあまりかたく考えなくても大丈夫です。
社労士が税理士や司法書士などのそのほかの士業と繋がっていることは多々あるので、会社や職場での困りごとは、まず連絡・相談してみることをおすすめします。

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