Withコロナ時代に増加している「適応障害」とは
明けましておめでとうございます。
統括産業医の関谷です。
2020年から2021年にかけては、コロナウイルス感染症で多くの企業や家庭の環境が変化しました。今まで毎日会社に出社していたのが、突然テレワークになったり、出張がなくなり遠隔会議になったりといろいろな変化がおきました。これらの多くの変化は心身に負担になることもあり「適応障害」になってしまう例も多く見られました。
昨年5月に、女優の深田恭子さんが出演を予定した連続ドラマを降板し、しばらく休養すると所属事務所が発表しましたが、理由について「適応障害」と病名を明らかにしたことはご存知の方も多いでしょう。最近、非常に増えている病気「適応障害」について、発症の背景や予防と対策について考えてみましょう。
適応障害とは
「適応障害」とは英語で表記すると「Adjustment Disorders」と書きますが、”adjustment” は「調節・調整する」という意味なので、ある特定の状況や環境に対して自分を適応させることができない、といった感じです。「障害」と訳されがちな”disorder” は、「正常な精神・身体の機能が混乱させられてしまっている状態」を指すときにも使います。
適応障害で認められる症状はうつ病の症状と似ていますが、うつ病は、好きなことも楽しめず、一日中気分の落ち込みがある状態が2週間以上と長く続きます。区別の仕方の1つに、適応障害では病気と原因となったきっかけがはっきりしていることが特徴です。うつ病でもきっかけはありますが、適応障害は、よりはっきりしていて環境の方に原因があるという考え方です。状況依存性と言います。会社でつらい気分になるので休職したら、とたんに元気なる。復職するとまたつらいとなる。
つまり、「適応障害」とは、日常生活の中で、何かのストレスが原因となって心身のバランスが崩れて社会生活に支障が生じたもの。原因が明確でそれに対して過剰な反応が起こった状態をいいます。日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態をいい、ストレスの原因が明確であることが定義上重要となります。
適応障害の予防とその対応
従業員自身が「疲れている」「つらい」と弱音を口にする時には、すでに心身の不調がかなり進行していると言えます。遅刻や欠勤などの勤怠の問題や業務中にミスを連発してしまう事態も同様です。
むしろ従業員がストレス過多になり始めるのは、端からはとても頑張っていてタフに見える時です。心配して声をかけても「大丈夫です!」と元気に答えてしまうこともあるでしょう。ですが、テンションを高く保ったままの状態を続けるには限界があります。本人は無理を重ねているのに、気力にあふれ、まじめに頑張っていると思われて、ますます仕事を抱え込んでしまうケースにも注意が必要です。
管理職の中には、職場で「チームの生産性を上げること」「指揮命令がしっかりできること」が、よいリーダーである条件と思っている人が少なくありません。しかし、部下から見たよい上司は「自分を気にかけてくれる」「質問に丁寧に答えてくれる」ということが多いものです。このギャップが、多くの社員にとってストレスの原因になります。「生産性を上げる」という目標を捨てる必要はありませんが、部下の視点に立って考えることも大切です。企業は管理職に対して、部下の個別性・人間性を尊重した対応ができるようになるための指導や研修を取り入れ、普段から下記の様な予防に気を配りましょう。
対応1:とにかくよい睡眠
睡眠は脳の状態がリフレッシュされます、睡眠で脳を回復させましょう。
対応2:健康的な食事 お酒は駄目
悪い食事は様々な病気の原因になります。食べ過ぎや飲み過ぎには注意しましょう。
対応3:仕事を見える化
何がストレスかわからない適応障害の社員さんが多いです。今日の出来事を書き出してみたりして仕事やストレスを客観視しましょう。書き出すことはストレスを減らす良い方法です。スケジュールやタスクを積極的に書き出してみましょう。
対応4:コミュニケーションの取り方を工夫
ストレスをため込まないようにするために、コミュニケーションの取り方を工夫しましょう。ルーチンの挨拶方法を決めるなども効果的です。心を開ける人と話し、感情や悩みを吐き出すことで、気持ちが楽になることもあるのでやってみましょう。
対応5:自分の特性にあった仕事を考える
条件によっては再発につながるような同じようなストレスが発生しない仕事を選ぶことが重要です。
適応障害で参考になるサイト
日本心療内科学会のサイトでは、こころの病と思われる症状を想定したQ&Aのページを用意してあります。自分の症状がどの病気と診断される可能性があるのか、身体機能に関係する病気か、年齢に伴う病気なのか、事例を挙げて紹介しています。もしご自身や職場の方で、何某か症状が出てお悩みの場合は一読をお勧めします
厚生労働省が開設しています、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」には「こころの病 克服体験記」として、様々なこころの病に悩む多くの人々が病を乗り越え、克服するまでの記録をまとめています。自分自身でも病気だと認識しにくい適応障害の具体的な症状と克服までの道のりについて書かれていますので、ぜひ参考にしてください
あとがき
普段からストレス対処技術について社内でも共有し、十分な睡眠や栄養を摂る生活リズムに気を付け、職場でもリモートワークでも生活のリズムが乱れないように気を付けるようにしましょう。
統括産業医 関谷剛