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産業医 関谷 剛 メッセージ

ウィズコロナ時代の労働衛生の3管理

統括産業医の関谷です。

会社で安全に社員の皆様に働いていただくためには、職場でのきちんとした管理をしていくことが重要です。その時によく使われる言葉に「労働衛生の3管理」という言葉があります。この3管理とは、「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3つの管理のことを示し、労働衛生管理の基本と言われています。

昨年からのコロナウィルス感染の広がりで、感染対策の一環として、多くの事業所では働く場所が会社内だけではなくなり、在宅勤務やサテライトオフィスといった場所でも行われるようになりました。この社会状況の大きな変化を受けて、厚生労働省は2021年3月にテレワークガイドラインを改定しました。このガイドラインは使用者が適切に労務管理を行い、労働者が安心して働くことができる良質なテレワークを推進するため、テレワークの導入と実施に当たり、労務管理を中心に、労使双方にとって留意すべき点、望ましい取り組み等を明らかにしたものです。

更に、労働基準法が制定されたのは戦後の昭和22年であり、高度経済成長期に大規模工事や工場で多発した労働災害死亡者を受けて成立した労働安全衛生法の時代とは、日本の働き方がは大きく変化しており、当然働く人の「健康管理」も肉体的な問題だけでなく精神的な分野にも対象を広げる必要が出てきています。
現在の社会環境の変化に伴って、「労働衛生の3管理」も新たな考え方や対策が求められており、ウィズコロナ時代を見据えた柔軟な管理を考えて行きたいと思います。

1:在宅ワークでの作業環境管理

「労働衛生の3管理」の中で、この2年で最も大きく変貌したのは「作業環境」ではないでしょうか。コロナ感染への予防対策の一貫として多くの事業所ではテレワークを導入し、今でも継続しているのではないでしょうか。

■テレワーク時の労働にも適用される法律
労働基準法上の労働者には、テレワークを行う場合も労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用されます。当然、自宅等においてテレワークを実施する場合においても、事業者は労働者の安全と健康の確保のための措置を講ずる必要があります(適切な作業環境の確保、健康診断、ストレスチェック等のメンタルヘルス対策、長時間労働者に対する医師の面接指導等)。労働者を雇い入れたとき、又は労働者の作業内容を変更し、テレワークを初めて行わせるときは、テレワーク作業時の安全衛生教育を行うことも重要です。

■自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意点
テレワークを行う作業場が、労働者の自宅等、事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)、労働安全衛生規則(一部、労働者を就業させる建設物その他の作業場に係わる規定)及び「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(令和元年7月12日基発0712第3号)は一般には適用されませんが、安全衛生に配慮したテレワークが実施されるよう、これらの衛生基準と同等の作業環境となるよう、事業者はテレワークを行う労働者に教育・助言等を行い、厚生労働省作成の「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用すること等により、自宅等での作業環境に関する状況の報告を求めるとともに、必要な場合には、労使が協力して改善を図る、又は自宅以外の場所(サテライトオフィス等)の活用を検討することが重要です。

2:健康管理で重要なメンタル対策

「労働衛生の3管理」の考え方は、従来は労働者にとって危険を伴う職場に対する考え方でしたが、近年のメンタル疾患の増加によりメンタル疾患予防のための「作業環境管理」、「作業管理」、「健康管理」を進めていく企業も増えてきています。
メンタル対策やメタボ対策などの最近の疾患に対してもこのような3管理の視点からもう一度会社の管理体制を見直してもいいかもしれません。

●安全衛生関連法令の適用と規定遵守の必要性

労働安全衛生関連法等の関係法令等においては、安全衛生管理体制を確立し、職場における労働者の安全と健康を確保するために必要となる具体的な措置を講ずることを事業者に求めています。自宅等においてテレワークを実施する場合においても、事業者はこれら関係法令等に基づき、労働者の安全と健康の確保のための措置を講ずる必要があります。

具体的には
*健康相談を行うことが出来る体制の整備
*必要な健康診断とその結果と迂路受けた措置
*ストレスチェックとその結果等を受けた措置

上記の具体例の実施により、労働者の安全と健康の確保を図ることが重要で、必要に応じて、情報通信機器を用いてオンラインで実施することも有効です。

●テレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点

テレワークでは、周囲に上司や同僚がいない環境で働くことになるため、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多いです。このような状況のもと、円滑にテレワークを行う為には、厚生労働省が作成した「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を活用する等により、健康相談体制の整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましいです。
また事業者は、事業場におけるメンタルヘルス対策に関する計画である「心の健康づくり計画」を策定することととしており(労働者の心の健康の保持増進のための指針:平成18年公示第3号)、当該計画の策定に当たっては、上記のようなテレワークにより生じやすい状況を念頭に置いたメンタルヘルス対策についても、衛生委員会等による調査審議も含め、労使による話し合いを踏まえた上で記載し、計画的に取り組むことが望ましいです。

3:労働衛生の3管理で参考になるサイト

厚生労働省のテレワークパンフレット

厚生労働省のサイトでは、2021年3月に改訂した「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」に関して事業主や企業の労務担当者向けのパンフレットやリーフレーットをダウンロード出来るようにしています。特にパンフレットは35ページにもわたり、様々な角度からテレワーク導入で生じる課題についても言及があり、上記で紹介した「チェックリスト」も含まれており、大変参考になりますので、ぜひ事業所ではダウンロードして、一読されることをお勧めします。

東京都「テレワーク・ワンストップ相談窓口」のサイト

東京都では都内企業の経営者や人事労務担当者・従業員を対象者にして、テレワークに関するお悩みを相談できるテレワーク・ワンストップ相談窓口を開設しています。テレワークの導入・運用時の様々な疑問や課題に、経験豊富な相談員が無料でサポートします。サイトの申し込みフォームに相談内容を入力すれば、電話で相談出来るほかに、ウェブ会議ツールでも相談できます。

あとがき

オミクロン株では感染しても症状は軽いとされていますが、感染すると周囲の人々への申し訳なさから、精神的に不安定になることもありますので、感染者への心のサポートにも配慮していくようにしましょう。

統括産業医 関谷剛

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