1. HOME
  2. ブログ
  3. 産業医 関谷 剛 メッセージ
  4. 夏こそビタミン補給~夏場の疲労感を予防するには、ビタミン摂取を意識した食生活を~

HEALTH TOPICS

トピックス

産業医 関谷 剛 メッセージ

夏こそビタミン補給~夏場の疲労感を予防するには、ビタミン摂取を意識した食生活を~

統括産業医の関谷です。
7月に入り夏の暑さが本格化してきますが、暑くなると身体が怠くなったり、疲労感が長く続いたりすることはありませんか?
夏場の疲労感、俗に「夏バテ」とも言われる夏特有の症状は、湿度が高くなり汗の蒸発が妨げられ、体温調節などの自律神経の乱れが起こり、身体の不調を引き起こすことにより、食欲不振や消化機能の低下、また暑さによる睡眠不足が重なり、慢性的に疲労がたまるのが原因です。
夏になって食欲が無いからと、そうめんや冷やした麺類を食べ続けるのは、夏バテをかえって助長させてしまいます。夏はたくさん汗をかき、体力が消耗したりして、栄養不足に陥りがちです。夏バテを防ぐには、食欲がなくても、できるだけ栄養バランスのよい食事をおいしく食べるようにすることが大切です。特に不足しがちなビタミンB1、ビタミンCを意識して摂る食生活について、この時期に知って下さい。

1:発汗により失われるビタミン類

ビタミンは、三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)の代謝を助ける働きをしてお り、ミネラルと共に微量元素といわれます。エネルギーや筋肉に直接変換されるわけではありませんが、ビタミンがないと体の機能がスムーズに働かず、いわば機械でいう“潤滑油”のような働きをしています。体内ではほとんど合成することができないため、食物から摂取する必要があります。
ビタミンは水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分けることができます。大量の汗をかいたとき、水溶性ビタミンやミネラルが汗とともに排泄されてしまい、夏バテや体調不良へと繋がっていくことになります(図1)。

図1 水溶性ビタミン・ミネラルの不足による主な症状

■水溶性ビタミンとは■
水溶性ビタミンは血液などの体液に溶け込んでいて、 余分なものは尿として排出されます。 体内のさまざまな代謝に必要な 酵素の働きを担っていて、ビタミンB群とビタミンCが水溶性ビタミンの代表です。
■水溶性ビタミンの特徴■
【1】水に溶けやすい
水溶性ビタミンは水そのものに溶けやすいという特性があるため、調理も手早く行う工夫が求められます。例えば野菜を洗う際でも素早く洗い、水にさらしたり、加熱したりする時間を短くすることが大切です。汁ごと食べられるような料理にすると効率良く摂取できます。
【2】熱に弱い
熱に弱い特徴があります。 特にビタミンCはなるべく加熱せずに摂るほうが栄養価は上がります。 アボガドや果物など、生のまま食べられる食材を積極的に摂るのも方法です。
【3】過剰症の心配が少ない
必要以上に摂取しても余分な量は尿に排出されるので、過剰症の報告は脂溶性ビタミンに比べて大変少ないです。
■水溶性ミネラルとは■
代表的な水溶性ミネラルはナトリウムやカリウムです。これからの季節、大量の汗をかくと体外に排出されてしまいます。
■ミネラル補給時の注意点■
【1】ナトリウム
熱中症を予防するためにも夏の暑い時期には、屋外での作業中や室内で過ごしている場合でも、水分補給では、ミネラルウォーターのような水分と共にナトリウムを含んでいる少量の塩も摂るようにしましょう。スポーツドリンクには塩分が含まれて、夏場に大量の汗をかいたときには飲みやすくて良いのですが、糖分も含まれているため、半分程度に薄めて飲むなど、糖分過多にならないようにしましょう。
【2】カリウム
カリウムは動物性食品や植物性食品に豊富に含まれているので、通常の食事ではほとんど欠乏症はみられません。しかし、激しい嘔吐や下痢がある場合、利尿降圧剤の長期使用の場合などでは、カリウムの排泄量が増し欠乏することがあります。

2:ビタミンB群を含む食品

ビタミンB群は互いに助け合ってはたらく、8種類の栄養素から構成されています。いずれも体内で重要な役割を果たしているためバランス良く摂取することを心掛けましょう。
■ビタミンB群とその役割■
ビタミンB1:糖質の分解を助ける
ビタミンB2:脂質の代謝を促す
ビタミンB6:健康な肌や髪、歯を作る
ビタミンB12:血液を作る
ナイアシン:皮膚や粘膜の健康維持を助ける
パントテン酸:脂質・糖質・たんぱく質の代謝に役立つ
ビオチン:皮膚や粘膜の健康維持を助ける
葉酸:貧血を防ぐ
■ビタミンB1の特徴■
ビタミンB1は食べ物に含まれる糖質からエネルギーを作り出すために必要なビタミンの一つです。ビタミンB1には糖質の分解を助けるはたらきがあり、糖質を多く摂取すればするほどビタミンB1が使用され、不足しやすくなってしまうといわれています。そのため、特に普段から糖質の多い食生活を送っている方は意識して摂取しておきたい栄養素の一つです。また、ビタミンB1には中枢神経と末梢神経の機能を正常に保つ作用もあります。
■ビタミンB1が含まれた食べ物■
ビタミンB1は動物性食品では肉類や魚介類(図2)など、植物性食品では穀類や豆類に多く含まれています。種子類では胡麻など、豆類では大豆などがあり、玄米など(図3)にも含まれます。

図2 ビタミンB1を含む動物性食品例

図3 ビタミンB1を含む植物性食品例

3:ビタミンCを含む食品

ビタミンCは、ストレスを軽減するホルモンを合成する働きがあります。暑さや疲労を感じると、副腎からストレスを軽減するためのホルモンが多く分泌されますが、この時にビタミンCが大量に消費されるので、ストレスが多いとビタミンCが不足してしまいます。ビタミンCは体内で合成できないので、汗として排出されることが多くなる蒸し暑い夏の時期は、よりいっそう毎日の食事から摂ることが大切です。
■ビタミンCとは■
アスコルビン酸としても知られるビタミンCは、食品に含まれている水溶性の栄養素です。ビタミンCには、酸化防止作用があり、体内でフリーラジカルによるダメージから細胞を守るのを助けます。フリーラジカルとは、摂取した食物が体内でエネルギーに変わる時に形成される化合物です。大気中にもタバコの煙や大気汚染、太陽からの紫外線によって発生したフリーラジカルが存在し、人々は曝露を受けています。
身体は傷の治癒に必要なタンパク質であるコラーゲンを生成するためにもビタミンCを必要とします。さらに、ビタミンCは、植物性食品からの鉄の吸収を促し、病気から身体を守るために免疫系が適切な働きをするのを助けます。
■ビタミンCの必要摂取量■
ヒトはビタミンCを体内で作れないため、成人では1日の推奨量が100㎎(2020年版食事摂取基準)と設定されています。また、通常の食事による過剰摂取の報告はないため、耐容上限量は定められていません。
しかし、ビタミンCの摂取量と吸収や体外排泄を総合的に考えると、通常の食品から摂取することを基本とし、通常の食品以外の食品から1,000㎎/日以上の量のビタミンCを摂取することは推奨できないとされています。
■ビタミンCを多く含む食品■
ビタミンCは、果実類、野菜類、いも及びでん粉類、し好飲料類に多く含まれています。バランスの良い食事を心がけていれば不足の心配はまずありません。ビタミンCは、風邪やインフルエンザなどの感染症の時、その必要量が増加します。また、喫煙によってもビタミンCの要求量が高まります。
近年、野菜の摂取量が減少しており、不足しがちなビタミン類を野菜ジュースで補う人もいますが、野菜ジュースから摂取されるビタミンCは、通常の食事で野菜から摂取した場合よりも、排せつまでの時間が非常に短いことが知られています。
厚生労働省では、国民が主体的に取り組める新たな国民健康づくり対策として「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本 21)」を展開しており、その中で生活習慣病などを予防し、健康な生活を維持するための目標値の一つとして、野菜類の摂取量は成人で1日350gとしています。大人の両手1杯が約100g程度の野菜に相当しますので、目安として、少なくとも両手1杯の緑黄色野菜と、両手2杯の淡色野菜を毎日摂取するように心がけてみましょう。
ビタミンCは、じゃがいも、カラーピーマン、キウイなど、野菜と果物に多く含まれています。特にじゃがいもは、効率よくビタミンCを摂取できるのでオススメです。ビタミンCは水に溶けやすく、調理時に失われやすいのですが、じゃがいものビタミンCはデンプンで覆われているため、調理後にもほとんど分解されずに残ります。
■ビタミンCが含まれる代表的な夏野菜■
暑い盛りが旬の夏野菜はたくさんありますが、その中でもビタミンCが高く含まれているのはトマト、ゴーヤ、ピーマンです。トマトはビタミンAとCが豊富で、ビタミンEが豊富なオリーヴオイルと合わせて食べる事でより抗酸化作用が促進、夏疲れの緩和につながります。ゴーヤとピーマンはどちらも生で食べるのに馴染みはない食材ですが、ゴーヤに含まれるビタミンCは熱に強く、ピーマンは組織が強い為にビタミンCが壊れにくい特性があります。どちらも豊富にビタミンCが含まれ、油と共に食べる事でビタミンAの吸収力も高まる栄養素として満点の食材です。
次に、夏の果物の中でビタミンCが豊富なのは、パイナップル、マンゴーといったトロピカルフルーツです。パイナップルはビタミンCの他にビタミンB1、B2、クエン酸が含まれており、たんぱく質の分解酵素が胃腸を健康に保ち、マンゴーはトマトと同じく抗酸化作用があり、β―カロテンがビタミンAへと変わり、活性酸素を抑制してくれます。こちらも野菜と同じく、加熱処理やシロップ漬けのものより、生で熟したものを食べる事で豊富なビタミンCをそのまま摂る事ができます。

現代社会では、仕事や家事育児に追われ、食事に十分な手間や時間がかけられない人は少なくないと思います。上記に紹介しましたビタミン類の毎日の摂取量に満たない食生活がつづいていると感じた場合は、食事だけで補えない栄養の補給にサプリメントを使う選択もあります。ただし、過剰摂取のリスクもあるので、用量用法は必ず守って使用してください。

4:ビタミンで参考になるサイト

健康情報サイト「e-ヘルスネット」
厚生労働省が運営しています生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、栄養と食生活の観点から季節毎にお勧めのビタミンが含まれた野菜や果物の紹介や、食物と薬の相互作用をサプリメントから論じる文章を国内の医師・研究者が専門分野ごとに分担執筆しており、信頼できる内容であり、ビタミン接種を意識した食生活を送る際には参考にしてはどうでしょうか。

公益財団法人長寿科学振興財団のサイト「健康長寿ネット」
厚生労働省の助成を受けて、高齢期を前向きに生活するために必要な情報を提供し、日本の健康長寿社会の発展に貢献しようとの目的で作られた公益財団法人長寿科学振興財団のWEBサイト「健康長寿ネット」では、高齢者を対象にした運動や栄養についての情報を専門家による解説がされており、ビタミンやミネラルに関しても1日の摂取量や含まれている食べ物の情報が細かく書かれています。。

あとがき

夏バテを防ぐには、1日6〜7時間は睡眠をとり疲れを残さないようにしましょう。また、運動することで、眠りやすくなり、夏バテに負けない体力を付けることができます。毎日20〜30分の運動を心がけましょう。涼しい早朝のウォーキング、ラジオ体操はお勧めです。産業医 関谷剛

関連記事