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産業医 関谷 剛 メッセージ

緑内障〜40歳以上の20人に1人がかかっている、失明原因第一の病気〜

統括産業医の関谷です。
6月から8月にかけては一年を通じて最も日差しが強くなる季節です。紫外線による人体への影響として日焼けや皮膚ガンなど皮膚へのダメージは知られていますが、常に外にさらされている目にも悪影響を与えます。
肌が焼けるように、紫外線は目にも悪い影響を与えます。しかし紫外線が緑内障を引き起こすわけではありません。紫外線の多くは角膜や水晶体で受け止めます。そのため白内障や角膜炎、視界の中心がぼやけたり歪んで見える黄斑変性症、白目部分が黒目部分に侵入してくる翼伏片(よくじょうへん)という目の病気を引き起こす原因になるのです。
いきなり病気にならないまでも、紫外線を長く浴びすぎると、目が充血する、異物感がある、涙が止まらない、目が乾く、といった違和感が生じた人も多いのではないでしょうか。このようなダメージは目の酷使につながり、間接的に緑内障に悪影響を与える可能性があるのです。
緑内障に関する啓発と情報発信、患者やその家族との交流と情報交換を目指して活動を行っている緑内障フレンド・ネットワークが2005年に6月7日を緑内障を考える日に制定し、日本記念日協会が認定をしています。日付の6と7で「緑内(りょくない)」と読む語呂合わせからこの日を記念日にしたそうですが、日本での失明原因の第1位である緑内障についてこの機会に学んでみて下さい。

1:緑内障とは

緑内障は視神経と視野に特徴的変化が現れ、眼圧を下降することにより視神経障害が発症する疾患で、日本での有病率は40歳以上では約5%で、日本緑内障学会の調査によると、推計緑内障患者数は400万人と報告され、つまり40歳以上の20人に1人は緑内障にかかっているということです。
現在、中高年の失明原因の1位は緑内障、2位は網膜色素変性症で、糖尿病網膜症、加齢黄班変性がそれに続きます。緑内障になる原因は断定的ではなく、遺伝、強度近視、眼圧、血流、生活習慣、服薬による副作用など様々な要因が絡むことで、眼神経に影響が及ぶと考えられています。
早期発見・早期治療できれば失明に至らずに済みますが、緑内障があるのに気付かず日常生活を過ごしている人も多く、緑内障は放置しておくと進行していく病気なため、早期発見と早期治療がなによりも肝心です。視野に支障を感じなくとも、定期的に眼科で検診を受けるようにしましょう。

失明の原因

【緑内障の原因】
緑内障の主な原因は、眼圧が異常に高くなることで、一番繊細な部分の視神経が傷つくことです。視神経が傷つくと、脳に伝達される視覚神経刺激の機能が低下し、視野が狭くなったり、視力が低下するなどの症状が現れます。
緑内障で眼圧が上昇する主な原因は、目の中で血液のような役割をしている「房水」と呼ばれる水がうまく排出されなくなることです。房水は私たちの目の中にある毛様体で作られ、目の組織に栄養を供給しています。目の圧力がほぼ一定で眼球の形状が保たれるのは、房水の循環のおかげです。
緑内障は、房水が眼内から出て行くところである隅角(ぐうかく)が目詰まりするなどして、房水をスムーズに排出できなくなった結果、眼圧が上昇して、視神経を傷つけることで視野が狭くなったり、視力が低下します。

【名称は知っていても説明出来ない代表的な目の病気】
日本眼科啓発会議が2021年6月に実施した全国40歳以上の13,157名を対象とした「目の健康に関する意識調査」では、緑内障を82.3%の人が知っていましたが、病気の説明ができる人はわずか25.7%で、老眼や白内障など代表的な目の疾患と同じくらい病名としては認知は8割を越えているものの、病気の原因や治療に予防については他の疾患の半分も浸透していないことが分かりました。

2:緑内障の種類と症状

緑内障の自覚症状は、徐々に視界に見えない部分(暗点)が出現する、または見える範囲(視野)が狭くなる、などがあります。

【症状の特徴】
緑内障の症状は徐々に進んでいくため、初期の段階ではなかなか気がつくことが出来ません。それは、片方の目が緑内障になった場合でも、普段は両目で見ているため、良い方の目が、症状が出ている方の目を補ってしまうためです。そのため、何かしらの異変に気がついて受診した時には、すでに緑内障が進んでしまっていたり、視力の低下がかなり悪化してしまっているケースも少なくありません。

【緑内障の種類】
緑内障は大きく4つに分類されます。

<緑内障の分類>
1. 原発開放隅角緑内障
2. 原発閉塞隅角緑内障
3. 続発緑内障
4. 発達緑内障

1.原発開放隅角緑
原発開放隅角緑内障とは、目の中に流れている房水という水が排出する場所が目詰まりして、房水が流れないために、眼圧が上昇するタイプの緑内障で、緑内障で最も発症しやすい疾病です。
病名の意味としては、原因となる他の病気がないにもかかわらず(原発)、隅角が見かけ上解放されているのに(開放)、隅角が原因で起こる緑内障です。
原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常範囲の数値であるにもかかわらず、視神経に障害をもたらす症状の緑内障を正常眼圧緑内障と呼びます。正常眼圧緑内障になる原因は、視神経の血液循環の停滞や遺伝的要因、免疫や酸化ストレスなどさまざまなことが関係しています。
◆視神経の血液循環の停滞
◆遺伝的要因
◆免疫
◆酸化ストレス
上のような、さまざまな要因で緑内障を発症することがあるため、今まで眼圧の上昇によって起こると考えられていた緑内障も、実は眼圧とは関係なく視神経に障害をもたらすのではないかという考え方も出始めています。
正常眼圧緑内障になる人は、他の緑内障と比べて高齢者や近視である人も多いことから、正常眼圧緑内障を発症するリスク因子は、加齢や近視であると考えられています。

2.原発閉塞隅角緑内障
これは原発開放隅角緑内障とは違い、他の病気のせいではなく隅角が狭くなり(狭隅角)、やがては閉じてしまうことで(閉塞隅角)、房水が流れることが出来なくなり、眼圧が上昇することで発症する緑内障です。

3.続発緑内障
続発緑内障は、緑内障を発症する前から持っている、目の病気や全身の病気が原因で、続発的に起こる緑内障です。目の病気や全身の病気が原因で眼圧が上昇して、緑内障を発症します。
続発緑内障には、開放隅角タイプと閉鎖隅角タイプがあります。続発緑内障を治療するためには、前から持っている病気や症状をきちんと理解して、その病気をしっかり治すことも必要です。

4.発達緑内障
発達緑内障は、隅角に先天的な異常があるために起こる緑内障です。生まれてすぐに眼圧が高いと眼球自体が大きくなることから、「牛眼(ぎゅうがん)」と呼ばれることもあります。
乳幼児の緑内障は、進行が早く、眼球の拡大によって目の機能が著しく低下させてしまう場合が多いため、早い時期に手術をすることがほとんどです。

【最も怖い急性緑内障発作】
緑内障はほとんどの場合、徐々に進行しますが、まれに急激に隅角が閉じてしまい、かなりのスピードで著しい眼圧の上昇が起こることがあり、この状態を急性緑内障発作といいます。急性緑内障発作では、目の痛み、頭痛、吐き気などの苦しい自覚症状がみられます。

急性緑内障発作による症状
◎目の痛み
◎充血
◎かすみ目
◎頭痛
◎吐き気

急性緑内障発作による症状が起きた場合は、一晩で失明してしまう可能性もあるため、すぐに治療を受けなければ、光を感じることも難しくなるような状態となることがあります。

3.緑内障の予防

【緑内障の予防方法】
緑内障になる原因は明確でないため、特に有効的な予防方法がないのが現状です。神経質になりすぎず、普段から良質で充分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を意識して、規則正しい生活をおくるようにしましょう。
ストレスを溜めすぎない健康的な生活が、あらゆる病気の予防になります。緑内障は発症初期、自覚症状がない場合がほとんどですが、進行性の病気なので早期発見が非常に重要です。

【緑内障になるのを防ぐには】
体のなかでも、目は日常的に酷使する部位です。年齢を重ねるほど目の負担も増えてくるので、思いやりを持ち大切に使いましょう。緑内障をはじめ、ほかの目の病気を予防するためにも、下記のような対策を取り入れてください。
・喫煙や寝不足、食事のバランスなど生活習慣を見直す
・自律神経を乱すストレスをためないようにする(適度な休息や運動など)
・スマホやパソコンの使い過ぎに注意
・ブルーライトと紫外線対策を取り入れる
・目に良いとされるサプリを取り入れる

【予防対策として定期的な眼科検診・検査を受ける】
目の病気というと、「命に直接関わることはない」と軽く考えている人も多いと思います。しかし、目の病気には知らず知らずのうちに進行し、放置することで失明につながるような病気もあります。例えば、緑内障や加齢黄斑変性などがその代表です。ゆっくり時間をかけて進行し、視力が低下していきますが、進行した状態で発見されても、治療が困難なことも多くあります。人間は日常の動作の多くを視覚に頼っています。見え方が悪くなると、何気ない日常生活に多くの不自由が出ることがあります。
緑内障は、徐々に進行していくため自覚症状が現れにくく、かなり進行しないと気づかないことも多いのが特徴です。

【40歳になったら年1度の眼科定期健診】
眼科医は検査を通して、緑内障であることを診断したり、既に緑内障にかかっている人に対して、今の治療方法が緑内障の進行を遅らせるのに適切かどうかを総合的に判断します。緑内障は、素人では判断が難しく、見た目から判断することもできないので、眼科専門医による視察が必要です。
特に気になる症状がない人でも、40歳になったら年に1度は眼科の定期検診を予約しましょう。もしも、急に視力が低下すると感じたら、早急に眼科医を受診しましょう。

【緑内障と診断されてからの注意点】
緑内障になったら、規則正しい生活を送るように心がけましょう。緑内障を引き起こす要因にはまだ分かっていないことが多く、緑内障を完治させる生活習慣なども、分かっていないことが多いのが現実です。
しかし、一度緑内障になってしまった場合は、眼圧を上げないような生活が望ましいため、例えば肉体的・精神的な過度の疲労、アルコール・水分・カフェインの過剰摂取などは、避けた方が良いでしょう。喫煙も神経そのものを傷める可能性がありますので、禁煙することをお勧めします。
また、風邪薬や安定剤、胃の検査などで使用するお薬の中には、眼圧を上げる作用を持つものがあります。市販されているお薬を購入するときや、医療機関でお薬を処方されるときは、薬剤師や医師に緑内障であることを告げ、影響のないものを使うようにしましょう。

4:緑内障で参考になるサイト

一般社団法人緑内障フレンド・ネットワークのサイト
緑内障を考える日を制定した法人で、緑内障患者が運営する患者会です。患者が緑内障と前向きに付き合うためのさまざまな活動を行うとともに、社会一般への緑内障啓発にも力を入れていて、サイトには緑内障について一般の方々に分かり易い解説が掲載され、書籍紹介など患者となったら関心を持ちそうな情報を提供しています。

公益財団法人長寿科学振興財団のサイト
緑内障の原因から症状、治療やケアについても写真やイラスト入りで詳しく解説されており、緑内障という病気を知る上で大変参考になるサイトです。

あとがき

緑内障をセルフチェックするなら、手のひらで片眼を隠して、もう一方の目である目標をじっと見てください。視野の中にかすんでいるところや、ぼやけて見える所がないかを探すという方法です。もし視野に異常を感じたら、眼科を受診するようにしましょう。産業医 関谷剛

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