毎年10月に最低賃金額が改定されます。
みなさんこんにちは。特定社会保険労務士がお届けする『労務のハナシ』第3回です。
緊急事態措置・まん延防止等重点措置が終了し、自民党新総裁も選出されました。
2021年度の下半期はどんな世の中になるのでしょうか。
コロナ禍の影響で、企業運営・業務遂行方法や、企業の価値観・風土も変わってきていると思います。
そんな中、今年も厚生労働省より地域別最低賃金時間額の改定が公表されました。
今年はとくに、上昇幅が大きい地域が多いです。
毎年10月には、お給料が最低賃金額以上かどうかの確認が必要です。
計算方法がまちがっていて最低賃金額を下回っていたなんてこともあり得ます。
金額と計算方法には、改めてご注意ください。
まずは、2021年10月以降の地域別最低賃金額を確認しましょう。
下記の厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」のリンクからご確認いただけます。
たとえば、東京都は10月1日より1,013円から1,041円、大阪府は10月1日より964円から992円に上昇しています。
賃金締め切り日が末日でなかったり、地域別最低賃金の発効年月日が10月1日でなかったりと、タイミングがずれることもあります。
自社の賃金締め切り日と、自社の都道府県の発効年月日をよくご確認ください。
POINT「地域別最低賃金」
- 毎年10月には地域別最低賃金の改定状況を確認する
- 自社の賃金締め切り日と地域別最低賃金の発行年月日に注意する
- 参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/)
つぎに、最低賃金の計算方法を改めて確認しましょう。
合っていると思っていた計算方法が、間違っていたということは誰にでもあり得ます。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から以下6つの賃金を除外したものが対象となります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
①時間給制の場合
時給制の場合は簡単です。時間給≧地域別最低賃金(時間額)なら問題ありません。
②日給制の場合
日給制の場合は「1日の所定労働時間」を用います。
日給÷1日の所定労働時間≧地域別最低賃金(時間額)かどうかを確認します。
③月給制の場合
月給制の場合は「1ヶ月平均所定労働時間」を用います。
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧地域別最低賃金(時間額)になっているかどうか、ご確認ください。
たとえば、以下の労働条件で働く従業員の場合はどうでしょうか。
- 基本給(月給) 150,000円
- 技能手当 40,000円
- 通勤手当 6,000円
- (とある月に支給された)時間外手当 20,000円
- 所定労働時間 8時間/日
- 年間労働日数 252日
上記の最低賃金の対象から除外される賃金を確認すると、通勤手当と時間外手当が該当します。
そして、③月給制の場合の計算式に当てはめると、以下の通りとなります。
(150,000円+40,000円)÷(252日×8時間÷12ヶ月)≒1,130円
一番高い東京都の最低賃金1,041円と比較しても、これを上回っていますので、この事例は問題ないということが分かります。
最低賃金の計算においては、自社の手当が最低賃金の対象から除外できる賃金に当てはまっているかどうか、年間労働日数に間違いがないかがポイントです。
その他、日給制と月給制の組み合わせの場合や歩合給制の場合の計算方法は、下記の厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」のリンクからご覧いただけます。
POINT「最低賃金の計算方法」
- 日給制や月給制なら時間単位の賃金を算出して最低賃金額と比較する
- 参考:厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-12.htm)
- 参考:厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-13.htm)
今年はとくに地域別最低賃金の上昇幅が大きく、また、コロナ対策も引き続き要請されるなかで、経営と人件費の兼ね合いが難しくなってくると思います。
会社全体の労働時間について、業務改善により残業時間を削減したり、パートタイマーの方々と話し合いにより所定労働時間を調整したりといったことが重要になるかもしれません。
設備投資等によって業務改善を行い、地域別最低賃金からさらに事業場の最低賃金額を引き上げた中小企業事業者は、『労務のハナシ』第2回でご紹介した「業務改善助成金」(https://lomlab.co.jp/2021/09/539/)を受給できる可能性があります。こちらもあわせてご検討ください。