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産業医 関谷 剛 メッセージ

片頭痛と緊張性頭痛~頭痛になる要因は多種多様~

統括産業医の関谷です。
6月は春から夏への季節の変わり目を迎え、朝晩の寒暖差が大きくなったり、台風などの大雨を伴う低気圧が突然訪れたりする時期は体調不良をおこしやすく、気温や気圧の急激な変化によって頭痛が発症しやすくなる季節でも有ります。また、真夏のような炎天下に外にいると頭が痛くなったりすることもありますが、頭痛には様々な外的な要因と、体内の異常で発生することもあり、要因に応じた対処方法が求められる病気です。
1990年代に行われた大規模調査で「15歳以上の日本人の約4割は、繰り返す頭痛を持っている」ことが分かりました。そこから日本人の約4,000万人は、頭痛で悩んでいることになり、正に国民病と言える身近な病気で、ぜひこの機会に職場の方々を交えて学んでみてください。

[1]国際頭痛学会による頭痛の種類

ひと言で頭痛と言っても、風邪や二日酔いで頭痛は発症し、3,500m以上の高山に登っても、アイスクリームなど冷たいものを食べた時にも頭は痛くなります。実は、「頭痛」といっても、脳そのもの(脳実質)が痛むわけではありません。頭部で痛みを感じるのは、骨膜、太い血管、硬膜、頭皮、頭を覆う筋肉、脳神経、上部頸髄神経などです。これらの組織が圧迫されたり、引っ張られたり、炎症を起こしたりした時、それが痛みとなって現れた結果を「頭痛」と総称しています。
実際には痛みの発生状況や痛みの種類などにより、様々なタイプに分類されます。医学的には国際頭痛学会頭痛分類委員会によって頭痛は分類され、それが世界的なスタンダードになっています。国際頭痛学会では2018年に最新の分類を第3版として発表しており、大きく一次性頭痛(慢性頭痛)、二次性頭痛(症候性頭痛)とその他の頭痛の3つにタイプを分けています。

①一次性頭痛(慢性頭痛)
一次性頭痛は、機能性頭痛、原発性頭痛、慢性頭痛などともよば れ、片頭痛(偏頭痛とも記載するが、正しくは片頭痛)、緊張型頭痛、群発頭痛を含んでおり、14種類が下記のように分類されています。

1. 片頭痛
2. 緊張型頭痛
3. 三叉神経・自律神経性頭痛
4. その他の一次性頭痛

②二次性頭痛(症候性頭痛)
二次性頭痛は 症候性頭痛、続発性頭痛などともよばれ、脳出血やくも膜下出血などの血管障害や髄膜炎や脳炎など感染性疾患のような器質的疾患に起因する頭痛群です。具体的にはがん治療薬やインフルエンザ治療薬は「医療用医薬品」、頭痛薬(ロキソニンS)や鼻炎薬(アレグラ)は「一般用医薬品(OTC医薬品)」に該当します。

5.頭頸部外傷・傷害による頭痛(例:むち打ちによる持続性頭痛)
6.頭頸部血管障害による頭痛(例:くも膜下出血)
7.非血管性頭蓋内疾患による頭痛(例:脳腫瘍)
8.物質またはその離脱による頭痛(例:薬剤の使用過多による頭痛)
9.感染症による頭痛(例:髄膜炎)
10.ホメオスターシス障害による頭痛(例:高山性頭痛)
11.頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頸部の構成組織の障害による頭痛または顔面痛(例:急性副鼻腔炎)
12.精神疾患による頭痛

③有痛性脳神経ニューロパチー・他の顔面痛およびその他の頭痛

1. 片頭痛
2. 緊張型頭痛
3. 三叉神経・自律神経性頭痛
4. その他の一次性頭痛

[2]片頭痛とは

片頭痛には大きく分けて、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」があります。前兆とはどのようなものを指すかというと、頭痛が起こる前に起こるさまざまな神経症状です。キラキラした光やギザギザの光が見える視覚性の症状、感覚が鈍くなるなどの感覚性の症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。これらのなかでは、視覚性の前兆が最も多く起こるとされています。前兆は5~60分続き、その後に頭痛が始まります。
前兆とは別に、頭痛が始まりそうな予感や眠気、集中力低下、頸部の凝り、空腹感などを経験する方もいて、これらは予兆と呼ばれています。片頭痛の有病率の全国調査では、15歳以上の日本人の約8.4%が片頭痛持ちだと推定されています。

■片頭痛のチェックリスト■
頭の片側が痛むことに由来して付けられた片頭痛という名称ですが、実際は頭の両側が痛んだり、頭痛以外の症状が現れたりする場合もあります。以下のような症状に悩んでいたら片頭痛かもしれません。

前兆のない片頭痛の診断基準(国際頭痛分類第3版:ICHD-3,2018)
【A】 B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
【B】頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
【C】頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
Ⅰ.片側性
Ⅱ.拍動性
Ⅲ.中等度~重度の頭痛
Ⅳ.日常的な動作(歩行や階段昇降)などにより頭痛が増悪する。
あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
【D】頭痛発作中に少なくとも以下の1項目をみたす
Ⅰ.悪心または嘔吐(あるいはその両方)
Ⅱ.光過敏および音過敏
【E】ほかに最適なICHD-3の診断がない

■片頭痛の原因■
片頭痛がなぜ起こるのか、その原因はまだ完全には解明されていません。原因や発生のメカニズムには諸説あり、以前は脳の血管が収縮して前兆が起こり、その後、血管が拡張して頭痛が起こると考えられていました。
しかし、最近では中枢神経に何らかの原因があるという説(神経説)や、三叉神経血管説があります。神経説とは、脳に片頭痛を起こす発生器のような場所があり、そこが刺激されると前兆や頭痛が起こるという考え方です。

*ストレスや睡眠不足が引き金に
片頭痛は日常生活のさまざまな要素が引き金となって発生するといわれています。例えば、ストレスやストレスからの解放、寝過ぎや寝不足、女性ホルモンの変化(月経周期)、天候や気圧の変化、空腹や脱水、肩こり、アルコール、カフェインなど、きっかけになり得るものは実にさまざまあります。
どの要素が発生の引き金になるのかは個人差があるため、頭痛に悩んでいる人は日頃からどんなときに頭痛が起こるのか、また頻度や痛みの度合いなどを記録する癖を付けておくことも大切です。

■治療法■
頭が痛いとき、鎮痛薬で良くなる場合もありますが、良くならないときは頭痛専門医や脳神経内科、脳神経外科、総合内科専門医などの受診をおすすめします。
片頭痛の治療は、頭痛発作を解消するための急性期の治療と頭痛発作を起こりにくくする予防療法の2種類に分かれ、症状に合わせて治療薬が処方されます。

■生活習慣を改善して片頭通を予防■
片頭痛を予防するためには、引き金となるような行動を控え、規則正しい生活を心掛けることも大切です。

*ストレスを上手に発散する
ストレスが片頭痛の引き金になることもあります。逆に、ストレスから解放される週末などに片頭痛の発作が起こるケースもあります。ストレスや疲労をため込まず、上手に発散しましょう。
*片頭痛の引き金になりそうな行動(アルコール、激しい運動など)を避ける
どんなときに片頭痛の発作が起こりやすいのか、ある程度予測できるケースもあります。たとえばアルコール摂取や激しい運動が片頭痛の引き金になれば避けるようにしましょう。騒音やまぶしい光などが引き金になる人は、うるさい場所などは避け、炎天下の外出などではサングラスをかけるのも予防につながります。また、寝不足や寝過ぎも影響するので、規則正しい生活ができるよう、生活改善も重要です。

[3]緊張性頭痛とは

■発症の主なきっかけ■
最も一般的なタイプの頭痛である緊張性頭痛は、肩、首、頭皮、顎の筋肉の緊張によって引き起こされます。ストレスやうつ、不安などが関連している可能性があり、働き過ぎ、寝不足、食事を欠食、お酒を飲む人に多く見られます。
後頭部から首すじにかけて、重苦しい感じや、頭をベルトで締めつけられているような圧迫感が緊張性頭痛にはあります。時々起こるもの(反復性緊張性頭痛)とほぼ毎日起こるもの(慢性緊張性頭痛)があり、片頭痛のようにズキズキする痛みや寝込むほど強い痛みではなく、動いても痛みは強くならず、光・音過敏や吐き気もありません。

■緊張性頭痛の特徴■
緊張型頭痛の特徴には以下のようなものが挙げられます。症状や発症時の状態が片頭痛とは少し異なります。

◆後頭部を中心に両側がじんわり痛む
◆片頭痛のようなズキズキする痛みや寝込むほど強い痛みではない
◆重苦しい感じや頭をベルトで締めつけられているような痛みがある
◆首や肩のこりをともなうことが多い
◆通常は吐き気を感じることはない
◆頭痛がしている時に光や音を煩わしく感じることは少ない
◆動いても痛みは悪化しない

■緊張性頭痛のメカニズム■
緊張型頭痛のメカニズムは、反復性緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛で異なると考えられています。

反復性緊張性頭痛
反復性緊張性頭痛は、頭や首、肩の筋肉の緊張から起こることが多いと考えられています。長時間、同じ体勢や無理な姿勢を続けることで、首や頭の筋肉に負担がかかり、緊張が高まります。その結果筋肉の血行が悪化し、血管に老廃物などが溜まることで炎症が起こり、痛み物質であるプロスタグランジンなどが産生されて、頭痛を引き起こすと考えられています。
慢性緊張性頭痛
慢性緊張性頭痛は、脳の神経そのものが痛みを感じやすいのではないかと考えられています。心配ごとや不安などの精神的ストレスが関連していることも多く見られます。

■緊張性頭痛の対処法■
緊張性頭痛への対処としてはフィジカル面と医療面の2種類が考えられます。

*マッサージやストレッチをする
デスクワーク中などに、頭の重さや肩こりを感じたら、休憩をとって、首すじや肩をマッサージしたり、簡単な体操やストレッチをしたり、体全体をほぐすようにしましょう。可能なら、こりや痛みを感じる場所を蒸しタオルなどで温めることも効果的です。また、頭や首・肩の筋肉に圧痛がある場合は、ひどくなるまで我慢せず、早めに鎮痛薬や筋弛緩薬を服用することも一つの方法です。
*病院で診療を受ける
「緊張性頭痛」の原因は身体的・精神的ストレスによるものが多いのですが、一見、緊張性頭痛のように見えても、別の病気が隠れていることもあります。長引いたり、症状が強くなったりする場合は自己判断せず、病院で診察を受けましょう。診察の結果、特に異常がなければ、ストレスケアに切り替えを。
精神的ストレスが原因の場合、一時的に抗うつ薬や抗不安薬が必要になることもありますが、生活のリズムを整えたり、環境を変えたりすることで改善できることもあります。

■片頭痛と緊張性頭痛が両方起こる合併型■
片頭痛と緊張性頭痛は、ストレスや疲労、寝不足など共通の誘発因子があるため両方が起こる合併型も多くみられます。
合併型の症状の現れ方には2つのタイプがあります。一つは、日によって片頭痛と緊張性頭痛が起こるタイプと、もう一つは、日常的に緊張性頭痛が起こっていて、たまに片頭痛が起こるタイプです。合併型が疑われる場合は、自己判断で適切に対処することが難しいため、頭痛外来や神経内科など頭痛専門医への受診をおすすめします。

[4]頭痛で参考になるサイト

一般社団法人日本頭痛学会のサイト
頭痛に関しての国際的な分類を担っている国際頭痛学会頭痛分類委員会とも連動して、最新の頭痛の分類と診断の情報を掲載しており、一般向けにも「頭痛について知る」というページで頭痛の種類や治療方法について分かり易く解説しています。頭痛患者が適切な理解とサポートを受けられるよう毎年2月2日を「頭痛の日」として制定し、様々な啓発活動も展開しています。

日本放送協会(NHK) 健康チャンネル
NHKが放送した様々な健康番組を、専用サイトにまとめたのが「健康チャンネル」です。病名ごとにページが分かれていますが、検索することで病気を調べることも出来、頭痛や片頭痛も特集ページがあります。病気に関してそれぞれ専門の医学研究者や医師が解説しており、分かり易いイラストや図が掲載されているのが特徴です。

あとがき

スマホやパソコンの画面を何時間も見続けていると目の疲れや肩こりになることをVDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群と言いますが、人によっては頭痛にもなります。働く環境や時間によっても頭痛は発症しますので、職場の衛生管理について産業医と相談してください。(産業医 関谷剛)

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