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産業医 関谷 剛 メッセージ

春に食物繊維

統括産業医の関谷です。
新しい年度が始まる4月は、新しい職場や新しい業務が始まる事が多く、気温の変化に伴う体温調整も必要となり、心身共に変化が大きい時期です。
健康的な生活を支える三原則は「快食」「快眠」「快便」です。しかし、不規則な食生活やバランスの偏った食事、運動不足やストレスなどの要因、ならびに近年の高齢化の進展に伴い、便秘の有訴者率が増加傾向にあります。便秘になっている原因に食物繊維の摂取不足が考えられます。食物繊維の摂取量を適正化することで便秘の症状が改善する場合が多いとされています。
健康づくりの指標である「健康日本21」(厚生労働省)において、成人1人1日当たりの野菜摂取目標量は、カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミン等の適量摂取が期待される量として350g以上とされています。しかし、現状は平均280g程度と約7割の人が目標量に達していませんが、これは必要量を正しく把握できていないことが理由の一つと考えられます。
4月になるとスーパーの野菜売り場にも春キャベツや新玉ねぎ、新じゃがなど「新」や「春」といった冠を付けた野菜が出回ります。食物繊維を多く含む野菜が出回る季節でもあるので、「快食」と「快便」の二刀流を実現するために、食物繊維について理解を深めて下さい。

1:食物繊維の必要性

食物繊維は小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する食品成分です。便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められます。

■大腸まで達しておなかの調子を整える食品■
食物繊維というと「繊維」という言葉から、細い糸のような、スジ状のものをイメージされがちです。しかし「ネバネバ」するものから、水に溶けて「サラサラ」した状態のものまで、多くの種類があります。特定保健用食品で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維で、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、溶けない「不溶性食物繊維」とに大別されます。

*水溶性食物繊維
性質:食品の水分を巻き込んでゲル化し、余分な糖や脂質を吸着する
食品:海藻類・芋類・麦・オクラ 等
*不溶性食物繊維
性質:水分を吸収して膨らみ腸を刺激、蠕動運動を活発にして便通を促す
食品:野菜類・穀類・豆類・きのこ類

食物繊維は「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。言い換えると、たんぱく質・脂質・炭水化物などは、消化管の中で消化酵素によって分解(消化)され、小腸から体の中に吸収されていきますが、食物繊維はこの消化酵素の作用を受けずに小腸を通過して、大腸まで達する成分です。水に溶けないセルロースやリグニン、水に溶けるペクチンやアルギン酸などの成分があります。さらに消化されにくい性質を持ったデンプン(難消化性デキストリン)、オリゴ糖などの成分も含まれます。はたらきとして、便の体積を増やす材料となるとともに、大腸内の環境を改善する腸内細菌に利用され、これらの菌を増やすことが明らかとなっています。

■日本人の摂取量は減少傾向にある■
日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、減少傾向にあります。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています。
厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。食物繊維は、体に絶対的に必要な栄養素ではありませんが、体の健康に深く関与する食品成分です。平均摂取量と目標量の差を見て明らかなように、食物繊維の積極的な摂取が必要です。
欧米において一日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスク低下が観察されるとの研究報告があります。体内でコレステロールから作られる胆汁酸の体外(便中)への排泄を促進し、血中コレステロール値を下げます。また食後の糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑える作用があるためです。さらに便の量を増加させるとともに、腸内の腸内細菌のうち、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を増やし、腸内環境を良好に整える作用も知られています。
体のサインから見た食物繊維の必要量は「一日に一回、規則的に排便がある」ことがひとつの目安になります。この状態である人の排便量は、一日に約150g(見た目ではMサイズの鶏卵で約3個分)であることがわかっています。まずはこの便量を作り出すための食物繊維を食事からとれているかが重要です。

*一日当たりプラス3〜4gを目標に
食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品に多く含まれます。食物繊維を手軽にとりたい方へお勧めする食品として挙げられるのは、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類などにも多く含まれています。食品で見ると、そば、ライ麦パン、しらたき、さつまいも、切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、糸引き納豆、いんげん豆、あずき、おから、しいたけ、ひじきなどは、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれています。効率的に食物繊維をとるには、これらの食材を毎日の食事の中に上手に取り入れると良いでしょう。
食物繊維は現在、多くの日本人が不足気味ですので、まずは一日あたりプラス3~4gを目標に、積極的に摂取することが勧められる食品成分です。

2:春野菜の食物繊維

春野菜がおいしい季節になりました。毎年、この季節にしか味わえない春キャベツ、新ジャガイモ、新玉ねぎ、菜の花、ふきのとう等は、甘くて柔らかく、食物繊維が多く含まれた今の時期ならではの食材です。春野菜には、冬の寒さを耐えぬいて成長してきたからこそ、すぐれた栄養成分がたくさん詰まっています。

■春野菜の特徴■
春野菜には、冬に貯め込んだ老廃物を体から排出しやすくしたり、寒さで代謝が滞りがちだった体を回復させる成分が多く含まれています。菜の花やタラの芽、ふきのとう、ウドなどに含まれる苦味成分「食物性アルカロイド」や、春キャベツに含まれる「ビタミンU(別名キャベジン)」がその成分で、そして春野菜にたっぷり含まれた水分と食物繊維、カリウムがそれらを促します。セリやセロリなどのセリ科の春野菜が放つ豊かな香りには、精油成分のテルペン類が多く含まれています。テルペン類は血行促進や抗酸化作用、ストレス緩和などの効果があります。
春になると心配な花粉症の対策には、腸のデトックスが重要ですので、食物繊維やカリウムを多く含む野菜を多くとることも必要です。食物繊維は「量」が大切なので、キャベツや春菊などの葉野菜をたっぷり食べると良いでしょう。
春の食材は水分が多くて柔らかいので、それを味わうためにも、サラダなどの生食や、軽く火を通しての食べ方がおすすめです。加熱すると流れ出てしまう栄養素も損なわずに取り入れられます。春野菜に含まれる栄養素と、その健康促進効果を紹介します。

*春キャベツ
冬のキャベツに比べて巻きが緩く、内部まで薄い緑色なのが特徴です。また、葉が柔らかくて甘みがあり、みずみずしいのでサラダなどの生食にむいており、栄養素を損なうことなく吸収できます。ビタミンC、ビタミンUが豊富でビタミンUは胃酸の分泌を抑え、胃の粘液を修復する働きがあります。
*新タマネギ
ビタミンB1、B2、C、カルシウムなどを含まれています。特筆すべきは、辛みのもとになる成分、硫化アリル(別名アリシン)で疲労回復や殺菌効果に加え、血液をサラサラにしてくれる効果があると言われています。
*菜の花
βカロテン(ビタミンA)やビタミンCが豊富で、特にビタミンCの含有量は野菜の中でもトップクラスです。造血作用のある葉酸も多く含まれる為、貧血気味の方にもおすすめです。
*タケノコ
ゆでた時にでる白い粒状のものはチロシンというアミノ酸の一種で、うまみ成分でもありますが、疲労回復や脳を活発化して集中力を高めてくれるなどの効能もあるといわれています。また、ミネラルのカリウムも豊富なので高血圧の予防、浮腫の軽減にも効能があると言われています。
*セロリ
βーカロテン、ビタミンB群、カリウム、食物繊維などの栄養素が豊富。よく使われるのは茎の部分ですが、実は葉には茎の2倍のβーカロテンが含まれると言われているので、いっしょに使いましょう。
*アスパラガス
注目成分はアスパラギン酸で「免疫力アップ」「疲労回復」など多くの効果が期待されています。他にもビタミンA、B1、B2、C、Eなども多く含まれます。

3:水溶性・不溶性をバランスよく

食物繊維を摂取しないと便秘になりやすいと冒頭に書きましたな、摂り過ぎも良くないのです。高い保水性や粘着力で便を軟らかくする水溶性食物繊維を多く摂りすぎると、おなかが緩くなり、下痢や軟便になることがあります。
ザラザラとした糸状の形をして、胃や腸で水分を吸収すると便の量が増すことで腸を刺激し、便通を促す不溶性食物繊維を過剰に摂取するとお腹が張り、便秘を悪化させる原因につながります。つまり、水溶性・不溶性食物繊維をバランスよく、適正量を正しく摂取することが健康のために大切なのです。
現代の食事パタ-ンは、コッテリとした西洋風へと変化し、肉類の増加(動物性たんぱく質、動物性脂肪の増加)、清涼飲料や菓子類をはじめとする砂糖の増加と、米の摂取量の減少が目立ち、食物繊維の摂取量は15グラム程度へと大幅に減少しました。バランスよく食物繊維を摂取するための、具体的な食事のメニューとしては、不溶性食物繊維を含む白米に、水溶性食物繊維を含む大麦を混ぜたご飯がおすすめです。また食物繊維を効率的に摂取するなら、主食である白ご飯やパンを、食物繊維が豊富な玄米・発芽玄米・全粒小麦などの精製度が低い食品に切り替えるのも方法です。
切り干し大根やきんぴらごぼう、ヒジキ煮などの日本を代表する和食のおかずをプラスすると、食物繊維摂取量が自然に増えていきます。果物には水溶性食物繊維や不溶性食物繊維の両方が含まれているので朝食でヨーグルトに混ぜたり、おやつにドライフルーツを食べたりするのも推奨します。
食物繊維の有用性が明らかになった現在、もう一度、伝統的なバランスの良い日本食を見直し、生活習慣病を予防しましょう。

4:食物繊維で参考になるサイト

「野菜を食べよう」プロジェクト
農林水産省では、野菜の消費拡大を推進するため、「野菜を食べようプロジェクト」を実施しています。野菜はビタミンやミネラル、食物繊維、機能性成分が豊富に含まれています。野菜がお手頃な価格となっている時期が分かるようなサイトへの案内や、特に栄養価の高い旬の野菜を紹介したりしています。

食物繊維と便秘、腸内環境に詳しいサイト
厚生労働省の生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」では食物繊維と腸内環境や便秘との関係について、医学専門家の投稿記事を複数掲載しており、一般の方々が気になる食物繊維と健康の関連について知ることが出来ます。

あとがき

便秘予防として腸内環境を整えるには、食物繊維の摂取以外に、運動も重要な要素です。腹筋を鍛える運動をして、腸がスムーズに動くための土台を作りましょう。運動をすることで自律神経のバランスが整い、胃腸が刺激されるメリットもあります。産業医 関谷剛

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