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産業医 関谷 剛 メッセージ

冷え性とは~冷えの症状で考えられる病気~

統括産業医の関谷です。
12月に入って寒さが増してくると、手先や足先が冷たくなって、キーボードを打つのが辛くなるという症状が出てくる人がいます。冷え症は、手足の先に行く細い血管の血行が悪くなり、手足や体の表面の温度が下がって冷たく感じる状態です。女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下や自律神経の乱れ、偏った食生活などが原因になっていて、半数以上の女性が冷え性に悩んでいると言われています。
「ひえしょう」は、「冷え性」と「冷え症」の二種類に分かれます。「冷え性」とは、検査や診断時では特別な異常が現れていない状態にもかかわらず、身体が冷えている状態のことをいいます。西洋医学上では「冷え性」を疾患名として認めていないため、「手足の冷え」や「ゾクゾクするような寒気」などの症状がみられても、「冷え性」という体質として認識しています。これに対して、東洋医学の場合では「冷え症」といい、きちんとした治療が必要な症状として扱っています。

[1]冷え性のタイプ

最近の研究で、冷え性にも冷えやすい箇所が手と足の先なのか、下腹部や二の腕なのか、という発症する部位によってタイプがあることが分かってきました。

■下半身型■
主に、腰から下の下半身が冷えるタイプ。お尻やふくらはぎの筋肉のコリによる血行不良が原因とされ、いわゆる「冷えのぼせ」の症状を起こすことも。加齢とともに起こりやすい。
■四肢末端型■
食事の量が少ない、運動不足などの生活習慣によって交感神経が過剰に働き、手先足先の血管が収縮して起こるタイプ。10〜20代の女性に多い。
■内臓型■
主に交感神経の働きが弱いことが原因で起こるタイプ。手足は温かいが、下腹部や二の腕に冷えを感じたりする。お腹を下したりする症状を伴う。
■全身型■
ストレスや生活習慣の悪化によって、基礎代謝の低下が原因となって起こるタイプ。ただし、甲状腺の病気などが潜んでいる可能性もあるので、医療機関で検査が必要。

なお、上述の各タイプの症状が組み合わさった混合型というタイプも存在しています。

[2]冷えの症状で考えられる病気

冷えを軽視できないのは、様々な不調を招いてしまうことがあるからです。ここでは冷えとの関連が考えられる不調、病気についてご紹介します。

■レイノー現象■
寒冷などの誘因により手足の血行が悪くなって、皮膚の色が蒼白または紫色(チアノーゼ)になり、痛み、冷感、しびれ感を自覚し、次いで血液の流れが回復すると、逆に充血し赤くなる現象をいいます。身体全体や手足が冷たい空気や水などにさらされたり、強い精神的緊張やストレスなどが引き金となり、手足の細い動脈の強い収縮が起こることによって生じます。
レイノー現象には原因不明の「レイノー病」と、何か他の病気があって起きる場合「レイノー症候群」の2つに分けられます。レイノー病は、30歳以下の女性に発症することが多く、血液検査で異常所見を呈することが少なく予後は良好です。
レイノー症候群では、血液検査で抗核抗体が検出されることが多く、時に進行してしまい、指趾が壊死することが生じることがありますので注意が必要です。
■更年期障害■
手足が冷たい、腰が冷えるといった冷え性の代表的な症状は、女性に多くみられます。とくに更年期を迎えるとその割合は増えていきます。これは冷え性の原因が女性ホルモンの分泌と関わりがあるためです。
更年期を迎えると、卵巣からのホルモンの分泌が減少しますが、一方ではこれを補おうとして、脳の視床下部から卵巣に対して性腺刺激ホルモンが過剰に分泌されます。このホルモンのアンバランスによって自律神経が影響をうけると、血液の循環がわるくなって冷え性などの症状が助長されるのです。このようにして更年期に起こるからだと心の不安定な自覚症状は不定愁訴とよばれ、いわゆる更年期障害の症状として知られています。
■血行障害■
身体が冷えると末梢部まで血液が届きにくくなります。その結果、冷えやむくみといった血行障害による症状が現れます。血行障害が起きると、下のような病気・症状が生じるリスクが高まります。

閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって血管の内腔が狭くなったり詰まったりすることで血行障害が起きる疾患です。手足の冷えやしびれなどが現れ、進行すると筋肉に痛みが生じます。血行障害がさらに進行すると歩行中に足が痛くなり、歩けなくなることもあります。
心筋梗塞
心筋梗塞は、冠動脈が詰まることで心臓への血液の流入が極端に少なくなるか、まったくなくなってしまい、心臓の筋肉が壊死する疾患です。胸の痛みや冷や汗、吐き気、嘔吐、呼吸困難などが生じます。

[3]日常で実践できる予防対策

冷えは、血巡りの悪さによって起こります。 血液には、熱を運んで体温を調節する働きと、臓器に酸素や栄養を運び、二酸化炭素や老廃物を回収する働きがあります。血巡りが悪いと、内臓の働きも悪くなり、免疫力も低下します。体も冷えて、だるさ、下痢、月経不順…全身に不調が起こるようになります。 また、新陳代謝も悪くなります。肥満、肌のくすみ、シワ…。 冷え症を改善すれば、これらの不調はよくなります。健康的な体型になって、アンチエイジング効果もあります。前述の冷え性のタイプ別に、対策や改善方法に付いて紹介しますので、冷えを改善するようにして下さい。

<タイプ別の対策・改善法>

■下半身型■
下半身型冷え性は、下半身の血行不良が原因となって起こります。スクワットやかかとの上げ下げ運動、階段の上り下りなどを積極的に行いましょう。また、マッサージやストレッチも効果的です。デスクワークなどで長時間同じ体勢をとる方は、定期的に立ち上がったり下半身のストレッチをしたりして、血液を循環させるように心がけましょう。
■四肢末端型■
四肢末端型冷え性の主な原因は、運動不足による筋力の低下です。体の中でもっとも多くの熱を生み出す筋肉をつけるために、毎日の生活に運動やストレッチを取り入れましょう。また、しっかり食事をとることも大切です。特にたんぱく質は、食事誘発性熱産生の高い栄養素のため、積極的に摂取することをおすすめします。お風呂はシャワーだけで済まさず、湯船にしっかり浸かるようにしましょう。
■内臓型■
内臓型冷え性は、ストレスなどで自律神経が乱れると引き起こされやすくなります。ストレスをため込まないよう適度に発散したり、規則正しい生活で睡眠不足を解消したりして、自律神経を整えましょう。薄着は避け、腹巻やカイロで積極的にお腹を温めるのも効果的です。冷たい飲み物や生野菜の摂取を控え、温かいものをとりましょう。
■全身型■
全身型冷え性の主な原因は、基礎代謝の低下にあります。適度な運動を取り入れたり、規則正しい生活を心がけたりして、基礎代謝を上げるよう努めましょう。靴下や腹巻などを活用し、できるだけ体を冷やさないようにすることも大切です。冷たい飲食物を避け、ショウガやネギなど、体を温める性質をもつ食品を積極的にとりましょう。

[4]体を温める飲食物を摂る

冷え性改善のためには体を温める食べ物を積極的に摂ることが大事で、代表的なものとして生姜、ネギ、ニンニクなどの根菜類が挙げられます。 また冷たい飲み物は体を冷やす原因となりますので、常温か温かい飲み物を飲むようにしましょう。 そのほかトマトやキュウリ、コーヒーや緑茶も体を冷やすものと考えられています。

[5]冷え性で参考になるサイト

女性の健康推進室ヘルスケアラボ
厚生労働省研究班監修サイトであるヘルスケアラボでは、すべての女性に知って欲しい女性のからだとこころの特性について、ライフステージに応じた健康の特徴について医師の解説があり、「冷え」に関しても記載があります。

日本放送協会(NHK) きょうの健康
NHKの番組で健康に関して放映した内容についてサイトで紹介しています。冷え性に関しては「きょうの健康」の他に、「あしたが変わるトリセツショー」でも紹介した事があり、最新の予防方法が紹介されています。
働く女性の心とからだの応援サイト
厚生労働省より委託を受けた一般財団法人女性労働協会が運営している「働く女性の心とからだの応援サイト」では、働く女性の多くが抱える健康について専門家による監修や投稿で、テーマ毎に細かく分かれて対応策について書かれていて、冷え性での食事対策についても記載があります。

あとがき

男性でも冷え症はあります。原因は女性と同じですが、男性の場合は冷えによって腰痛やED(勃起不全)を引き起こすこともありますから、中高年の男性で冷え性に悩まされている人は、お気軽に産業医に相談してみてください。(産業医 関谷剛)

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